「数学嫌い」の人は暗記教育の犠牲者といえる理由 公式ばかりを覚えて本当の楽しさを知らない

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筆者は大学専任教員として44年間過ごしてきて、来年度末で定年退職となる。その間、非常勤を含む10の大学で文系・理系ほぼ半々で、合わせて約1万5000人の授業をもってきたことになる。90年代後半からは、小中高校の出前授業でも約1万5000人の生徒に話してきた(半分は手弁当)。

数学好きな大学生や生徒が数学に興味・関心を示すのは、「なぜそのような性質がいえるのか」というプロセスや、「そのような応用例もあるとは不思議だ」という楽しい応用話である。したがって、質問は「どうしてこれが成り立つのですか」という部分に集中する。

14年前からは、本務校として桜美林大学リベラルアーツ学群に勤めている。10年以上前に「就職委員長」であった頃、数学嫌いの学生たちは就職適性検査の非言語問題(数学や論理の基礎的問題)に弱いことが問題となった。そこで当時、ボランティア授業「就活の算数」を後期の毎週木曜の夜間に開催した。

昼間の教職や数学などを含めると週に10コマ近い授業であったが、昔の寺子屋のように生き生きしたもので、数年間で1000人ぐらいの学生に楽しく学んでもらった。その授業は後に、リベラルアーツの発想をアレンジして正規の授業になり、来年度末の筆者の定年退職まで続く。その授業を通して得たものは以下のようにはかりしれない。

理解せずに暗記に頼る学習の弊害

桜美林大学の学生は心掛けがすばらしく、授業態度はかなり良い。その一方で、数学の学び方が小学生の頃から間違っていたと思われる学生が少なくない。すなわち、なんでも理解せずに暗記に頼る学習である。

多項式の微分と積分の計算はできる学生に、「AグループまたはBグループに所属する学生の人数は、『Aの人数+Bの人数-AかつBの人数』だから……」と話すと、「それって暗記した記憶はありませんが、暗記するものですか」と質問する。それと似たような不思議な質問は枚挙にいとまはないが、いくつか紹介しておこう。

等式の右辺にある項を左辺に移す移項に関して、「両辺に-aを加えるから、右辺にあるaを左辺に移すとマイナスが付く」と説明すると、「初めて移項の意味がわかりました。そうすればよいと単に暗記していました」と答える。

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