高校野球リーグ戦「試合後に交流会」を開くワケ ラグビーの「ノーサイド」に倣う大阪の取り組み

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「ラグビーでは試合が終わればノーサイドになって敵味方なく健闘をたたえ合い、会食したりします。高校野球でもぜひやろうということで、試合終了後、両方の選手数人が車座になって、その試合について『あれはナイスプレーだった』とか『あのプレーが決定的だったよね』などを話し合うことにしました。

指導者は入らず、選手だけで話し合い、結果を共有します。野球に対する理解が深まりますし、選手同士も仲良くなって、連帯感が生まれました。野球は競技ですから、勝利を目指すのは当然ですが、『野球をする仲間』としてつながりができるのは大事なことだと思います」

公立高校と私学では、野球部が置かれた環境は異なるが、今年でリーグ戦に参加して5年目になる関西大倉高校の松井僚平監督はこう語る。

関西大倉高校の松井僚平監督(写真:筆者撮影)

「うちは52人の選手がいるのですが、リーグ戦でさまざまな選手を起用できるのはいいですね。球数制限や飛ばないバットなど、いろいろな条件も経験する中で、選手が成長する機会が増えて、心の底から“野球が楽しい”と思う選手、大学や社会人でも野球を続けたいという選手が増えてほしいです」

11月21日、リーグ戦を勝ち抜いた学校によって決勝戦が行われた。実績から下のリーグに振り分けられたみどり清朋高校が優勝2回の強豪、大阪学芸高校を破る“下剋上”のあと、関西大倉高校と、今年、京都府から特別参加した立命館宇治高校での決勝戦が行われ、立命館宇治が勝利した。

「Liga Agesiva」で得られた成果

「大阪も頑張らなあかんなあ」と指導者たちは語り合った。立命館宇治の西田透野球部長は、このリーグで得た成果として以下のように語った。

胴上げされる立命館宇治高校の西田野球部長(写真:筆者撮影)

「指導者として、先を見据えて取り組んでいたつもりでしたが、本当の意味での『育成』ができていなかったと気づけました。日程も、秋季大会が終わり、オフシーズンに入る前に課題を明確にするためにもいいタイミングでした。うちの学校は、Ligaには大学で野球を続ける3年生と、1、2年生で秋にベンチ入りできなかった選手を中心にメンバー構成をしました。3年生がいたことで、ベンチ内でとくに1年生へのアドバイスする機会がたくさんありました。

トーナメント戦では勝ちにこだわるので変化球が主体となり、球数も多くなっていましたが、リーグ戦ではストレートの質やコントロールにこだわることができました。また、打撃、守備、走塁でもいろいろな気づきがありました。さらにオンラインセミナーでは木製や低反発バットを使う意義が理解でき、スポーツマンシップの理解も深まりました。今回特別にLigaに参加させていただき、想像以上に大きな学びと成果がありました。次年度は京都での開催に向けて取り組んでいく必要性を感じました」

筆者は今年、全国のLiga Agresivaを見て歩いた。率直に言ってリーグ戦の意義への理解はさまざまで、半知半解で参加した印象の指導者もいたが、リーグ戦が終盤になるとともに「来年も参加したい」という声が増えてきた。

香里丘高校の藤本部長は「『球数制限』とか『低反発バット』とか、新しいことをやっているので、参加させてほしいと言う学校が増えていますが、本当に大事なのはスポーツマンシップや子どもたちが成長することです。それを理解する学校に入ってほしい」と強調する。来年以降もこの輪が広がることを期待したい。

広尾 晃 ライター

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ひろお こう / Kou Hiroo

1959年大阪市生まれ。立命館大学卒業。コピーライターやプランナー、ライターとして活動。日米の野球記録を取り上げるブログ「野球の記録で話したい」を執筆している。著書に『野球崩壊 深刻化する「野球離れ」を食い止めろ!』『巨人軍の巨人 馬場正平』(ともにイースト・プレス)、『もし、あの野球選手がこうなっていたら~データで読み解くプロ野球「たられば」ワールド~』(オークラ出版)など。

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