「GDPが国力のすべて」と思う人の大いなる勘違い

政治的な思惑で産まれた物で自然の法則ではない

GDPで国が荒れる経済のカラクリとは?(写真:シルバーブレット/PIXTA)
景気指標としてよく使われる「GDP」(国内総生産)。GDPが高いと景気がよく、低ければ経済的に好ましくない、そう認識しがちです。しかし、「GDPは犯罪増加で上昇することも」と、オランダニュースメディアの数字特派員サンヌ・ブラウ氏は語ります。『The Number Bias 数字を見たときにぜひ考えてほしいこと』より、知られざるGDP誕生の背景、そこから見える正体と限界を解説します。

「収支」をひたすら足して景気を算出

GDPは「国内総生産」と定義され、ある国の中で生産された財とサービスの総額を指す指標です。国の経済活動を計測する際によく使われ、GDPが下落すると景気後退と見なされ、政府は財布の紐をきつく締めます。

このGDPはアメリカで生まれた概念で、時は第2次世界大戦に向かおうとしていた時代でした。

当時のアメリカを覆っていたもの、それは歴史的な大不況です。しかし、「ではどれくらい経済は悪いか?」を問われると、正確に答えられる人は誰もいない状況でした。物価や輸送についてのピンポイントな統計はいくつかあったものの、アメリカ経済全体の状態がわかる数字は1つもなかったのです。

そこでアメリカ政府は、経済学者で統計学者のサイモン・クズネッツに「国全体の収入」の計算を依頼し、クズネッツはすぐさま仕事に取り掛かることに。アメリカ全体の家計と会社の収入を地道に足し、1934年にその結果が出ると、アメリカ経済は政府の予想を凌駕する悲劇的状態で、ほぼ「死体」となっている実情が浮かび上がっていました。

クズネッツが計測したところ、1929年から1932年の期間で、国全体の収入はわずか半分に減少していました。史上初めてアメリカ経済の体温を測ったところ、氷点下をはるかに下回る結果になったのです。

政府はどう動いたか――。アメリカ政府は、このクズネッツが算出した結果に不満を抱きます。戦争が目前に迫っており、この結果をそのまま公表することは政治的に不都合きわまりなかったのです。

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