脱オフィス一本足!進化するポスト・イット 超アナログなのに手放せない製品の育て方

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だが、ふたを開けてみれば、それは杞憂に終わっている。ポスト・イットにとって幸いだったのは、「単純な機能だが、ビジネスシーンでは必須かつ代替不可能な文具として浸透していたこと」と、伊藤さんは話す。そのため、「会社が買わなくても、自分で買って使うユーザーが少なくない」というのだ。

それならば、自腹で買ってくれる人にもっと楽しめるものを――。これまでのポストイットとは違った、パステル色以外の色を使ったもの、ハート形などこれまでなかった個性的な形にしたものを次々と投入している。これを契機に、自分の気分やテンションを上げるためオフィスで個性的なポスト・イットを使うユーザーが増えたと同時に、家庭や友人同士など、プライベートでもポスト・イットが使われるようになった。

オフィス以外でのニーズをくみ上げる

2013年に登場した新シリーズ「シルエットデザイン」

2013年には、「シルエットデザイン」という新シリーズを上市した。お花や動物などの形をあしらった8種の個性的なデザインのものだ。単にデザイン性を追求しただけでなく、「多く書けるスペースがある」あるいは「一言で書けるスペースがある」という、ポスト・イットユーザーのさまざまな投球に答えている。

ポストイットは非常にアナログなものだが、「今後はデジタルとの融合などどこまで可能かを追求したい」と伊藤さんは力を込める。

すでに、パソコンやスマホ向けアプリケーションとして使われている「Evernote」と連携できるポストイットも販売しているが、「紙もデジタルも両方使う人にどんな便利なものを提供できるか。それが考えどころ」(伊藤さん)。

同時に、前述したようなプライベートでの利用を増やす、あるいは学校などの教育現場で重宝する商品の開発も課題に上がっている。その一環で、3Mは、付箋の特徴をうまく生かした勉強法をサポートする製品「楽しく学ぶふせんシリーズ」を2013年7月に発売し、これまでのオフィス利用にとどまらない提案を強化している。顧客層をさらに広げることができるか。

福田 恵介 東洋経済 解説部コラムニスト

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ふくだ けいすけ / Keisuke Fukuda

1968年長崎県生まれ。神戸市外国語大学外国語学部ロシア学科卒。毎日新聞記者を経て、1992年東洋経済新報社入社。1999年から1年間、韓国・延世大学留学。著書に『図解 金正日と北朝鮮問題』(東洋経済新報社)、訳書に『金正恩の「決断」を読み解く』(彩流社)、『朝鮮半島のいちばん長い日』『サムスン電子』『サムスンCEO』『李健煕(イ・ゴンヒ)―サムスンの孤独な帝王』『アン・チョルス 経営の原則』(すべて、東洋経済新報社)など。

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