脱オフィス一本足!進化するポスト・イット 超アナログなのに手放せない製品の育て方
ポスト・イットが誕生したのは、「貼ってはがせる」のりがあったからだが、そののりも進化している。きっかけはパソコンの普及だ。オフィスのデスクにパソコンが鎮座するようになり、メモやいわゆる「todoリスト」として、パソコンのディスプレー周りにポスト・イットを貼り付ける人が増えたのだ。
ディスプレーの外枠や、それに似た材質のものに貼り付けるには、これまでのポスト・イットの粘着力では弱く、貼っても短時間でハラリと落ちてしまう。そこで生まれたのが、通常のものの2倍の粘着力を持つ“強粘着”タイプだ。
また、クリアファイルのような材質のものにも貼られるようになったことで、「そこからはがれないように、これまで裏面の一部分だけにつけていたのりを全面につけたものを生み出した」(伊藤さん)。
「SIGN」? No、「捺印」!
日本の文化が影響して生み出された新商品もある。その文化とは、「捺印」だ。米国では書類のサインする場所に目印として貼る「SIGN HERE」と書かれたポストイットが販売されており、日本でもこのタイプは売られている。だが、やはり日本は「サイン」でなく「印鑑」文化。ユーザーの声をくみ取り、「ご捺印ください」と書かれた同型のものを販売するに至った。
ところが、さらに問題が発生した。この製品は紙ではなくプラスチック材質をつかったもので、かつ下地が透明なものを使っていた。「SIGN」「ご捺印」という文字をはっきりと浮かび上がらせるためだ。
しかしそれがあだとなり、「ポスト・イットが貼ってある範囲がわからず、その上から印鑑を押してしまい、書類にきちんと押されないという指摘が出てきた」(伊藤さん)。
この声を反映し、ポスト・イットが貼られている範囲がわかるように、現在は無地ではなく「ドット」を入れたものを製品化。人気を集めている。
順風満帆に支持を得てきたように見えるポスト・イットだが、先行きに不安が生じた時期がある。2008年のリーマンショック以降、社内の備品として購入されていた文房具を、経費削減の一環で大幅にカットするオフィスが増えた頃だ。
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