“35歳以上婚”における「子作り」のリアル マット・デイモン似の夫が「その気」になるまで8年!

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ただし、結婚後に周平さんの仕事は次第に上向きになった。以前よりも積極的に営業活動に励むようになり、新居の近くの会社からも仕事をもらえるようになった。結婚前までは食生活も不規則でガリガリにやせていたが、現在は5キロほど太って健康的な容姿になった。元来の気難しさも抑えられている。麻美さんは周平さんにとっていわゆる「あげまん」なのだ。

仕事が好調だと男性はあらゆる面で元気になる。体の奥底から自信がみなぎってくる。お互いが39歳になる今年、周平さんの口から「そろそろかな」という子作り宣言が出た。ただし、麻美さんは少しあきれ顔だ。30歳前後で子どもが欲しかった自分とは10年ものズレがある。

「『35歳を過ぎると子どもができにくくなる』と周囲からさんざん言われていたのに、結婚したのも35歳。『あーあ。(35歳に)なっちゃったよ』と思っていました。そして、38歳でようやく子作り。来年、ダンスの大会があるんです。久しぶりに出てみたいけれど、今から妊娠をしたらほかのメンバーに迷惑をかけてしまいます。もっと早くに子どもを産んでいたら、ダンスにも落ち着いて取り組めたのに……」

後悔を率直に話してくれる麻美さんだが、子作り以外の面では結婚生活は順調のようだ。家事は麻美さんが中心にやっているが、周平さんも水回りの掃除や食器の片付け、夕食作りなどをやってくれる。家計は折半で、共同口座に毎月10万円ずつ入れ、家賃や水道光熱費の引き落とし、食材や生活雑貨の買い物に使っている。お互いに責任を感じるからこそ、仕事にも迷いなく取り組めるようになった。麻美さんと周平さんは、それぞれが一人暮らしのときよりも、はるかに豊かで安心な生活を送れているのだ。

子作りに関しては僕も他人事ではなく、どうすればいいのかという答えは出せない。徹底的に不妊治療をするのもひとつの道だし、どこかであきらめて2人で生きるのも道だ。今さら「なぜもっと早くに協力しなかったのか」と周平さんを責めることはできない。彼には彼のペースがあり、それを無理に崩したら自立心をも壊してしまいかねないからだ。

相手に周平さんを選んだ時点で、麻美さんの結婚生活はある程度決まっており、すべての幸福を手にすることはできない。努力はしてもいいけれど、どこかで納得をすることが必要だと思う。

他人の「幸せ情報」が毎日たくさん入ってきて、限りない欲望に身を焦がし続ける僕たち。自分の人生に納得できる日がいつか来るのだろうか。

(イラスト:堀江篤史)
 

大宮 冬洋 ライター

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おおみや とうよう / Toyo Omiya

1976年埼玉県生まれ。一橋大学法学部卒業後、ファーストリテイリングに入社するがわずか1年で退社。編集プロダクション勤務を経て、2002年よりフリーライター。著書に『30代未婚男』(共著、NHK出版)、『バブルの遺言』(廣済堂出版)、『あした会社がなくなっても生きていく12の知恵』『私たち「ユニクロ154番店」で働いていました。』(ともに、ぱる出版)、『人は死ぬまで結婚できる 晩婚時代の幸せのつかみ方』 (講談社+α新書)など。

読者の方々との交流イベント「スナック大宮」を東京や愛知で毎月開催。http://omiyatoyo.com/

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