GAFAの戦略バイブルに書かれていた「すごい予言」 知っておくべき「情報経済」というキーワード

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商品を使うユーザーが多いほど商品価値が高まるのが、正のフィードバックだ。コロナ禍で広がった在宅ワークのおかげで、Zoomユーザーが一気に増えた。他社も同等サービスを出しているが、Zoomに慣れた人はスイッチング・コストがあるため、他社サービスを使いこなすのに戸惑ってしまう。こうしてますますZoomが使われる。

正のフィードバックを起こせ

情報経済では正のフィードバックにより、強者はさらに強く、弱者はさらに弱くなっていく。顧客が「主流になりそう」と思う商品が選ばれ、さらに売れる好循環が起こる一方で、「将来性がない」と思われた商品は売れなくなる。

アップルはiTunesで「音楽ダウンロード販売」を始めて一時はデジタル音楽販売市場を独占していた。しかしSpotifyが2006年に「定額聴き放題サービス」を始めると、わずか10年で主役は交替した。情報経済では新興企業が市場を独占したり、既存技術が新登場の最新技術であっという間に葬り去られるのもこの仕組みのためだ。

有形財主体のモノ経済ではこうならない。大手はある程度まで市場シェアを上げられるが、独占まではできないのだ。これは「規模の不経済」があるからだ。生産工場で生産量が一定規模を超えると、生産管理や調整が急に複雑になり、逆に生産コストが上がってしまうという「規模の不経済」が起こるのだ。

情報経済では再生産コストがほぼゼロ。だから「規模の不経済」は起こらない。むしろユーザー数が増えれば増えるほど、ユーザー1人当たりのコストが劇的に下がり続ける。この結果、競争上も圧倒的に有利になり市場を独占できるのだ。グーグル検索やフェイスブックのユーザー数は、いまや全世界で数十億人。彼らは世界で最も低コストなサービスでもある。

正のフィードバックには、もうひとつ要因がある。情報経済では同じ商品を使う人が多いほどユーザーにとって魅力的になる。たとえば電話。電話を使う人が世界で数人なら、電話の価値はほぼゼロ。電話は多くの人が使い、世界中の人とつながるからこそ価値がある。つながるユーザー数が多いほど価値が上がることを「ネットワークの外部性」という。メトカーフの法則により、ユーザー数が10倍だとネットワークの価値はなんと約100倍になる。市場シェア90%のサービスの価値は、市場シェア9%のサービスの100倍なのだ。

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