弱音吐く、すぐ泣く…リーダーを部下が慕う真意 室町幕府を築いた足利尊氏もダメ人間だった!

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武力のない朝廷では、国をまとめることはできません。いまさら武士を犬馬のごとき地位まで下げようとしても、彼らが納得するはずもありませんでした。

そこでまた尊氏が担ぎ上げられたのです。あなたは源氏の棟梁なのだから武家政権に戻してくれ、という声に、尊氏は再び重い腰を上げざるをえませんでした。

とはいえ、今回は今まで味方だった人々が敵に回っています。天才的軍略家の楠木正成、足利家と並び称されていた源氏の雄・新田義貞などです。当然のように、尊氏は初戦で負けてしまいました。

御曹司尊氏が味わう初めての挫折、逆境

足利軍は捲土重来を期して、九州まで逃げのびます。御曹司として生きてきた尊氏が初めて味わう挫折、逆境の体験といえるかもしれません。

その結果、彼は「私はここで死ぬ、死ぬんだ」と泣いて刀を振り回したそうです。リーダーとしてこれほど情けない者もなかったはずですが、それでも味方は尊氏を見放しませんでした。まだ再戦があります、と必死になだめたのでした。

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尊氏もどうにか立ち直り、九州の武将たちを味方につけ、改めて上京すると、今度は湊川の合戦で楠木正成に勝利します。そして、ついには後醍醐天皇を京から追い出すと、室町幕府を立ち上げたのでした。

 尊氏のように、弱さを隠さないリーダーのあり方は、今の「令和」の時代なら支持されやすいと筆者は思っています。

いつも目の前で泣かれるのはさすがにご免ですが、ときには弱さを見せることで、自負心のある部下たちにやる気を起こさせ、チーム全体を奮起させることができたならば、それも立派なマネジメントではないでしょうか。

加来 耕三 歴史家、作家

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かく こうぞう / Kozo Kaku

歴史家・作家。1958年大阪市生まれ。奈良大学文学部史学科卒業後、同大学文学部研究員を経て、現在は大学・企業の講師をつとめながら、独自の史観にもとづく著作活動を行っている。『歴史研究』編集委員。内外情勢調査会講師。中小企業大学校講師。政経懇話会講師。主な著書に『日本史に学ぶ一流の気くばり』『心をつかむ文章は日本史に学べ』(以上、クロスメディア・パブリッシング)、『「気」の使い方』(さくら舎)、『歴史の失敗学』(日経BP)、『紙幣の日本史』(KADOKAWA)、『刀の日本史』(講談社現代新書)などのほか、テレビ・ラジオの番組の監修・出演も多数。

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