弱音吐く、すぐ泣く…リーダーを部下が慕う真意 室町幕府を築いた足利尊氏もダメ人間だった!

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ときには弱さや涙を見せる、そんなリーダーでもいいかもしれません(写真:mits/PIXTA)
チームはバラバラ、成績が上がらない、部下が言うことを聞かない……。現代はリーダー受難の時代です。なりたくてなったわけでもないのに、責任を背負わされ、結果を求められる人も多いようです。「もう降りたい」と思うことも多々あるでしょう。
「そんなときは日本史に学んでみてはいかがでしょうか」というのは、歴史作家の加来耕三氏です。「歴史の偉人たちが、いざというときにリーダーとしてどう立ち振る舞ったかは、現代のリーダーにも参考になるはずです」。加来氏の新刊『日本史に学ぶリーダーが嫌になった時に読む本』からそのヒントを紹介します。
第1回 「ナンパ好き」源頼朝が一大勝負で見せた"別の顔"
第2回 「難問にぶつかった」リーダーが知るべき超発想

今は弱さを見せたほうが共感されやすい?

リーダーは強くあらねばならない、と思っている人が今なお多いように思います。部下に弱みを見せるなんてもってのほか、つねに模範とならなければいけない。それが理想のリーダーである、と。

もちろん、力強いリーダーをやれる人はやるにこしたことはありません。が、無理に自分に合わないリーダーを演じてみても、すぐにボロが出てしまいます。むしろ今時は自分の弱さを包み隠さず見せたほうが、部下の共感を得られるケースが多いのです。

これは現代に限ったことではなく、日本の歴史上にもそういうリーダーシップを発揮して、成功した例がいくつもありました。室町幕府の創設者・足利尊氏はその好例といっていいでしょう。

足利尊氏のことを、鎌倉幕府を打倒して室町幕府を創始した力強いリーダーだ、と思い込んでいる人は今も多いようです。ところが実像はその真逆といってよく、彼は生来、気が弱いダメな人でした。

困難に直面すると不安を隠しません。泣き出します。ひどいときは「腹を切る」「私は死ぬ」といって、周囲を困らせました。それでも家臣たちは尊氏を見捨てませんでした。彼のダメな部分が可愛く見えたのかもしれません。

尊氏よりも能力の高かった弟の直義や、優秀な重臣の高師直が、「この人には私がいないとダメだ」と思い、必死に支えてくれたのです。

尊氏は足利家という武家の名門に生まれ、何不自由なく育ちました。鎌倉幕府の執権である北条家の最後の執権(16代)・赤橋守時の妹を、尊氏は嫁にもらうなど、鎌倉政権下でも武家として最高の扱いを受けています。

ですから、彼は逆境などというものを、そもそも味わったことがありませんでした。日々、嫌な思いをしたことがないから、人を恨んだり、疑ったりすることもありません。素直に周囲の人々を皆、受け入れていました。

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