50代で将来に焦る人の一発逆転ははたして可能か 社会人大学、資格取得…いろいろ手段はあるが

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その際、相談に書かれているような社会人学校や資格取得は、過去のキャリアと関係のない分野であれば、まったく役に立たないことをまずは理解しましょう。現状の延長では将来が見えないからといって、未経験の分野で資格を取得しさえすれば逆転できるという考え方は間違っています。まったくの未経験の分野であれば、例えば同じ資格取得者なら、若い人のほうが採用面を含め有利であることは否めません。

もっと言うと、TAさんの年齢ぐらいの方に求められるのは、単なる勉強から得た知識ではなく、知識と実経験による知恵であり、実務能力であり、マネジメント能力なのです。

したがって、TAさんはまず思考回路を現在の「現状に満足できない→現状とは異なる分野でより活躍したい」ではなく、「現状に満足できない→過去のキャリアを前提に、どの分野であればより活躍できるか」に切り替えるべきなのです。

やるべきは自身の経験とスキルの棚卸

年齢だけでなく、職業人として残された時間を考慮すると、やはり過去の積み重ねを活用する以外は、現実的な選択肢ではないはずです。ですから、やるべきは、一発逆転を狙おうと現状と異なる分野に目を向けるのではなく、自身の経験とスキルの棚卸です。

自分は何ができて、何ができないのか。そして、自分が持っている不満や不安はどこから来ているのか。なぜ毎日が代わり映えがないと考えるのか、代わり映えのない毎日のどこに不満を感じているのか、人生を謳歌していると思える他人はなぜそう見えるのか。

そういったことを理解したうえで、どうするかを考えるべきなのです。そうすることで、今後ご自身がどんな分野に注力するべきか、またはどんな職場で働くべきなのかが、より明確に見えてくるはずです。

要は、キャリア上や人生を歩むうえでの「志」や「軸」のようなものを、自身の性格や思考を理解したうえでキチンと構築しよう、ということです。漠然とした不安や不満、思考ではアクションにはつながりません。志や軸が不在のまま人生を生きるというのは、地図を持たないで旅に出るようなものです。

もちろん、そういった行き当たりばったりの人生を歩みたい、そのなかで新しい発見を通じて自分自身を成長させたいというのであれば、それでまったく構わないのですが、相談を拝見するに、TAさんの場合、地図がないがゆえに迷子になってしまっているように思えます。

そうであれば、まず進むべき人生の旅におけるご自身オリジナルの地図を入手することが大切です。人生変わろうと思えばいつでも変われます。要は、やるか、やらないか。どれだけ現状を変えることに真剣になれるか。まずはそこからです。

TAさんがこれを機にご自身の人生に対して真剣になり、生きるうえでの軸を構築し、よりよい人生に向かって歩み出されるであろうことを応援しております。

安井 元康 『非学歴エリート』著者

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やすい もとやす / Motoyasu Yasui

MCJ社長兼最高執行責任者(COO)。アニメーションの企画・制作を手掛けるベンチャー企業を経て、MCJにて東証への上場を経験。その後、経営共創基盤にて戦略コンサルタントして9年間活躍し、2016年3月にMCJに復帰。著書に学歴コンプレックスに悩みながらも独自の方法でキャリアを切り開いてきた様子を描いた『非学歴エリート』(飛鳥新社)や、自分ならではの人生を生きる術を描いた『極端のすすめ』(草思社)等がある。

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