岩澤信夫 その3【全4回】 周りの農家に“堕農”と言われても貫き通した

私は日本不耕起栽培普及会を1993年に立ち上げました。田んぼを耕さず、農薬も肥料も使わずに、安全で高く売れるおコメを作る農法を普及させるためです。現在の会員は300人余り。教えた人は2000人ぐらいいますが、実行する人は、まだわずかです。

おコメを作るのは年に1回。試しにやって失敗したら、来年1年間の自分の経済に響きます。だから農家は新しいものに飛びつきにくいのです。そのうえ私の農法は農作業が少ない。コメ作りでは、草取りを何度もし、虫一匹いないようなきれいな田んぼを作る人が“精農家”として評価されます。ところが私の農法は、耕さなくていいし、草取りもほとんどしない。こうしたやり方は、古くから田んぼをやっている人からすれば“堕農”です。そんな方法には、チャレンジしづらいのです。

仮にやってみようという人がいても、周りの人たちが悪口を言います。特に女性群からの声が厳しい。耕さない田んぼを見て、「あそこの家の旦那、どうかしてるんじゃないの」と陰口をたたく。そう言われていると知った奥さんはつらくなり、「もうやめようよ。元のやり方に戻そうよ」と夫婦で口論になる。そして結局は頓挫してしまう。そういう例がたくさんありました。

農家の人の多くは、マインドコントロールをされていると思います。これまで農協などが指導してきた、農薬や肥料やトラクターを使う農法がいちばんいいと思っている人が多い。私の農法はすべてその反対ですから、実行しにくいのでしょうね。農薬や肥料やトラクターのメーカーや販売店の仕事も減ってしまうし。

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