岩澤信夫 その2【全4回】 真雁とイトミミズに教わった無農薬・無肥料のコメ作り

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 耕さない田んぼで、農薬も肥料も使わずにおコメを作る--私が20年がかりで考え出したこの方法の、いちばんのヒントになったのは宮城県田尻町(現・大崎市)の田んぼです。

前回お話ししたような経緯で冷害に強いイネ作りに成功した私には、さまざまな自治体から講演の依頼がありました。田尻町もその一つ。

当時、田尻町はロマン館という大規模な宿泊施設を建設していました。私は「季節のいい時期はともかく、冬は誰が泊まるのだろう?」と考えてしまいました。田尻町長に聞くと明快な答えが返ってきません。そこで私は、冬の田尻町の田んぼに、渡り鳥の真雁(マガン)がたくさん来るようにしてはどうでしょう、と提案しました。隣町の伊豆沼は、真雁が越冬のために渡ってくる南限の地として有名でした。田尻町の田んぼも冬の間、水を張っておけば、真雁が何万羽も飛来するのではと考えたのです。

田尻町長はすぐに意気投合してくれました。農家への講習会を重ね、冬の間も田んぼに水を張ってもらうようにすると、たくさんの真雁がやってきました。田尻町に冬の観光資源が生まれ、ロマン館に多くの人が訪れ、作戦は大成功したのです。

このことはコメ作りのうえでの大きな発見を生むことになりました。真雁が来た田んぼには、ほとんど雑草が生えてこない、ということを見つけたのです。最初は真雁が雑草を食べていると思っていました。しかし、真雁がシベリアに帰るのは3月中旬。田植えが始まるのは5月中旬。この2カ月の間も、雑草は生えなかったのです。

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