「男らしい/女らしい」人ほど結婚しにくい? 東大教授が「モテと性役割分業」について考えた

✎ 1〜 ✎ 17 ✎ 18 ✎ 19 ✎ 最新
著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

女性の側の「身勝手」は、2位に「経済力」が来る点で、「経済力があって家事育児をしてくれる男性」を求めているのだとすると、ハードルが上がります。経済力の水準にもよりますが、稼ぎが多い職場は労働時間も長い場合が多く、「仕事はちゃんとしてね、そのうえで家事育児にもきちんと参加してほしい」と言っているわけで、これまた実現はなかなか難しくなります。

結婚したいなら、お互いに性役割分業規範から自由になるべき

これらを「身勝手」と呼ぶのは、その要求の中に両立の難しい、相反する条件を加えているからです。「働いたうえで家事は全部」とか「稼いでくれて家事も」とかのように。そして、こんな「身勝手」がぶつかるため、「結婚できないのは適当な相手が見つからないから」とブツブツ言うことになるわけです。条件はわかっているのですから、対応策は比較的簡単です。相反する要件を外すのです。

男性の場合は、今から学歴や収入を急に高めたりはできない以上、家事の能力を身に付け、女性の仕事をサポートできるような考え方、働き方をしていく必要があるでしょう。「両立」を望む以上、当然です

女性の場合は、専業主婦になれないと思うのなら、相手に経済的に依存せず、きちんと自分のキャリア形成を考え、経済力を基準に相手を探すようなことをやめよう、ということになります。

冒頭の問に戻りましょう。モテるためには、性役割分業規範に従うほうが有利なのか、不利なのか。まず男性側です。女性が「重視」するのは、「経済力」以上に「家事の能力」や「仕事への理解」。だとすれば男性は、性役割にとらわれない行動をとるほうが有利ということになります。

一方の女性側はどうでしょうか。9割の男女が「専業主婦は無理」と考えているのですから、女性も「女は家庭」だけで生きていける時代ではありません。また「家事を全部やって仕事も」というのも、女性の負担が重すぎて非現実的です。「両立」を求める男性が増えているのですから、性役割規範にとらわれずに、女性が働くことを前提とした家庭環境に向けて、男性とよく話し合う必要がありそうです。

バブルの末期、30代を目前にしても大学院生で年収200万円にすら届かなかった私は、付き合うかもしれないような女性には、「僕はあなたの分まで稼ぐ能力もなければ、意思もありません。その代わり、家事育児は必ず半分以上、分担します。自分のアウトプットを最大化するのではなく、2人のアウトプットを最大にすればよいので、自分の仕事をセーブしてでも、あなたのキャリア形成を応援する意思はあります」と伝えていました。

上記のデータから分析すると、それでもまったくモテなかったのは、「人柄」と「容姿」に問題がありすぎたからだということになります……。

瀬地山 角 東京大学教授

著者をフォローすると、最新記事をメールでお知らせします。右上のボタンからフォローください。

せちやま かく

1963年生まれ、奈良県出身。東京大学大学院総合文化研究科博士課程修了、学術博士。北海道大学文学部助手などを経て、2008年より現職。専門はジェンダー論、主な著書に『お笑いジェンダー論』『東アジアの家父長制』(いずれも勁草書房)など。

「イクメン」という言葉などない頃から、職場の保育所に子ども2人を送り迎えし、夕食の支度も担当。専門は男女の社会的性差や差別を扱うジェンダー論という分野で、研究と実践の両立を標榜している。アメリカでは父娘家庭も経験した。

大学で開く講義は履修者が400人を超える人気講義。大学だけでなく、北海道から沖縄まで「子道具」を連れて講演をする「口から出稼ぎ」も仕事の一部。爆笑の起きる講演で人気がある。 
 

この著者の記事一覧はこちら
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

関連記事
トピックボードAD
キャリア・教育の人気記事