43歳で「直木賞」どん底這った男が得た最高の天職 山周賞も!「テスカトリポカ」佐藤究の苦労人生

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「江戸川乱歩賞は一般の人も応募できる賞です。つまり『新人からやり直したらどうですか?』という意味合いがあったと思います。

誰かほかの編集者を紹介してもらえるんじゃないか?と期待していた自分は甘かったと思いました。でも落ち込んだりは全然しなくて

『その手があったか』

と考えました」

佐藤さんはゾンビ小説を書いていたが、すでに江戸川乱歩賞の規定枚数を大きく超えてしまっていた。

仕方なく3カ月くらいで別の小説を書き、江戸川乱歩賞に応募した。結果は小説誌に1次通過の名前が載っただけで終わった。

「江戸川乱歩賞は簡単な賞ではないから、1次通過でも名前が載ったら仕事が来ると思ったんです。誰かに気づいてもらえて、呼び戻してもらえると……。でも誰からも連絡はありませんでした。

そこでようやく、本当に自分の立ち位置を理解しました。ふっきれました。ペンネームも変えて、今までとは別人として作品を書き、翌年の江戸川乱歩賞に応募しました」

江戸川乱歩賞を受賞、賞金を元手に次作を執筆

覚悟を決めて書いた『QJKJQ』は、見事に第62回江戸川乱歩賞を受賞した。

「乱歩賞をとっていちばん大きかったのは、賞金1000万円をいただけたことですね。それだけあれば1年間は確実に小説に専念できる。そして失敗しても立て直す余裕がある。ただ、今後は額が変わるらしいんですが……。

1000万円ももらってプロになれないんだったらもう専業はあきらめて、副業でボツボツ書いていこうと思いました。無理やり夢を追いかけると悲惨な目に遭うことは、よく知っていましたから。

賞金は全部、次回作の取材費に使ってやろうと思いました。ただいくら資料を買っても、取材旅行しても、意外とお金って使えないんですね(笑)。壊れたパソコンを買い替えたりして、結局300万円くらい使った時点で、作品が書き上がりました」

佐藤究名義の2作目『Ank : a mirroring ape』は、第20回大藪春彦賞、第39回吉川英治文学新人賞と2つの大きい賞を受賞することができた。

「それで小説家を専業でやっていこうと思えるようになりました。

専業にすると、専業でしかできない作品に取り組めます。副業だと、時間がないからロケとかしづらいし、書く題材も限られてしまいますね」

そこからは順調に依頼は増えていった。

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