「いい転職」できる人・できない人の決定的な違い 不安な時代に身につけたい「2つの会計的視点」

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また、安定を求めて保守的な大企業に転職したいのであれば、過去に似たような社風の大企業で勤めた経験が一度でもないと厳しいはずです。でもその一方で、革新的なスタートアップ企業に転職したいなら古風な企業に長く勤めた過去は、マイナス評価の原因となりうるかもしれません。

このように「自分ののれん」を意識することで日頃の自己投資の仕方や、キャリア戦略、転職のタイミングなどが変わってきます。

たとえば営業成績でつねに会社の上位にいる営業マンが、ある会社からいまの1.2倍の給与で誘われているとしましょう。思わず食指が動きそうですが、自分ののれんを意識すれば、そこであえてもう1年間だけいまの会社にとどまり、死に物狂いで働いて、「全国ナンバーワン」という実績(のれん)をつくることに専念する方法もあるはずです。

仮にそれに成功すれば「のれん」は爆上がりして、2倍の給与で引く手数多という状況をつくることができるかもしれません。営業スキルの差はほとんどなくても、「社内2位」と「社内1位」では「のれん」の価値がまったく変わるのです。

私は何も自分の実績を盛れ、といっているわけではありません。嘘はいつかバレます。そうではなく、せっかく高い能力なり豊富な経験を持っているのであれば、それを第三者が見てすぐにわかるような「のれん」に変換していかないと損をする、と言いたいのです。

働くうえで一段上の視点を持てる「オプション思考」

転職やキャリア戦略を考えるときに、のれんと並んでもうひとつキーワードとして意識したいのが「オプション」です。会計や金融の世界におけるオプションとは「権利」という意味を持ちますが、より平たくいえば「選択肢」のことです。ここでは、私が提唱する会計思考の考え方で、仕事をするうえで役立つ「オプション思考」を紹介したいと思います。

一番よく知られているオプションといえば企業が従業員に与えるストックオプションがあります。自社株を直接従業員に与えるのではなく、事前に決められた価格(基本的に安い価格)で一定数の自社株を購入できる「権利」を従業員に与える制度のことです。

自社株の市場価格が上がったタイミングでオプションを行使して、会社から自社株を割安で買い、それを市場で売却することで、まとまった売却益が得られるという報酬制度です。自分が得をすると思うタイミングで権利を行使すればいいだけの話なので、仮に会社が傾いて自社株が紙クズ同様になったとしても、従業員が損をするわけではありません。

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