米中貿易戦争により幕を開けた、国家が地政学的な目的のために経済を手段として使う「地経学」の時代。
独立したグローバルなシンクタンク「アジア・パシフィック・イニシアティブ(API)」の専門家が、コロナウイルス後の国際政治と世界経済の新たな潮流の兆しをいち早く見つけ、その地政学的かつ地経学的重要性を考察し、日本の国益と戦略にとっての意味合いを、順次配信していく。
具体策なきUSTRタイ代表の演説
「われわれはすべての手段を、必要があれば新たな手段を含めて、準備しておく必要がある」
10月初旬、米通商代表部(USTR)のキャサリン・タイ代表は、アメリカのシンクタンク、戦略国際問題研究所(CSIS)における講演でこう強調した。しかし、具体的な手段への言及はなかった。
タイ通商代表は、中国との競争は歓迎するが、その競争は公正であるべきと主張。中国は国家中心のシステムにより世界市場を歪めており、国際社会の懸念に答える改革を怠っていると批判した。これに対し、アメリカは国内に投資を行い、また同盟国等と協力し、強い立場から中国に臨むと宣言した。そのうえで、初期的措置として以下の4つを提示した。
① (2020年1月に締結された)米中貿易協議の第1段階合意の順守を中国に求める。
② 1974年通商法301条に基づく対中関税の除外措置を再開する。
③ あらゆる手段(必要なら新たな手段)を用いて、中国の有害な非市場的貿易慣行からアメリカの利益を守る。
④ 懸念を共有する同盟国やパートナー国と協議・調整してルール形成等に協力する。
② 1974年通商法301条に基づく対中関税の除外措置を再開する。
③ あらゆる手段(必要なら新たな手段)を用いて、中国の有害な非市場的貿易慣行からアメリカの利益を守る。
④ 懸念を共有する同盟国やパートナー国と協議・調整してルール形成等に協力する。
4つのポイントと問題点
1つ目の2020年1月の第1段階合意では、知財保護や金融市場開放など一定の改革は盛り込まれたが、国営企業や補助金などの重要な構造問題は含まれず、中国によるアメリカの農産品等の大量購入約束が中心となった。
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