中国が「世界の脱炭素」の鍵を握る存在となった訳

気候変動を巡る地経学、後れる日本に何が必要か

中国の電力不足と脱炭素コミットメントから見えてくることは?(写真:Paul Yeung/Bloomberg)
米中貿易戦争により幕を開けた、国家が地政学的な目的のために経済を手段として使う「地経学」の時代。
独立したグローバルなシンクタンク「アジア・パシフィック・イニシアティブ(API)」の専門家が、コロナウイルス後の国際政治と世界経済の新たな潮流の兆しをいち早く見つけ、その地政学的かつ地経学的重要性を考察し、日本の国益と戦略にとっての意味合いを、順次配信していく。

中国が深刻な電力不足に見舞われているワケ

中国が過去20年間で最悪の電力不足に襲われている。深刻な電力不足は、さまざまな主要産業の製造ラインに影響を及ぼし、住宅の停電など市民生活にまで影響が及んでいる地域もある。その背景の1つには、石炭の価格高騰のほか、脱炭素の御旗のもと、政府が石炭を主燃料とする火力発電所の稼働を抑制したことがあった。

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2020年の国連総会で、習近平国家主席は「2060年までに二酸化炭素(CO2)の排出量を実質ゼロにする」旨を表明し、それに伴い中国国内では一部の地方にエネルギー消費量抑制などが課され、今年8月には抑制が不十分と指摘された地方などで電力の供給制限が一気に強まり、電力不足が顕在化した。脱炭素と安定した電力供給をいかに両立させるか。中国政府の脱炭素政策のあり方が問われる事態となった。

強引な脱炭素政策で国内経済基盤が揺れる中国。習国家主席の演説は、かつてCO2の排出削減義務を拒否し続けた最大の排出国である中国が、いまや気候変動対策と気候外交を積極的に行う立場になったことを国際社会に発信した。中国に追随するように、日本の菅義偉首相(当時)は温暖化ガスの排出量を2050年までに実質ゼロにするという野心的な目標を表明し、大統領選挙中から「2050年までにCO2排出量の実質ゼロ」を公約したバイデン政権も、就任初日にパリ協定へ復帰するなど、国際社会の信頼回復に注力している。

グリーン政策のパワーゲーム

現在グラスゴーで開催されているCOP26では、各国が気候変動対策で国際的に主導権を取ろうとするパワーゲームがまさに繰り広げられている。

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