現在、EUの「欧州グリーンディール投資計画」、バイデン政権の「グリーン・ニューディール政策」、日本の「グリーン成長戦略」と、主要国の「グリーン戦略」がそろい踏みしているが、いずれも脱炭素の実現を目指すことで産業構造を転換し、国際競争力を高めようとしている。
カギとなるのは中国だ。2005年ごろから省エネルギーの促進や再生可能エネルギーの普及に積極的に取り組むようになった中国はいまや風力・太陽光発電など再生エネルギー製品の生産、輸出、投資いずれの面でも世界トップの座を占めるまでになった。太陽光や風力による発電、蓄電池、電気自動車(EV)の効率的な生産設備などの技術が、企業や経済、貿易の先行きを大きく左右しようとしている。
中国は、発電設備の容量でみた世界シェアのうち太陽光約36%、風力同33%を占める。国家主導で産業を育て、ほんの10年ほどで、他国を圧倒する地位を築いた。清華大学研究機関によると、習主席がCO2排出の実質ゼロを宣言したことで、この先、中国の環境技術分野にはさらに15兆ドル(約1600兆円)規模の投資が行われる可能性がある。
中国は再エネ関連の技術開発で先行
国際再生可能エネルギー機関(IRENA)の報告書(2019年)によると、2016年時点ですでに中国は同分野の特許を最も多く握る。その数は世界全体の29%を占め、アメリカ(18%)、EUや日本(ともに14%)を大きく引き離す。報告書は「再生可能エネルギーの生産技術と特許をもつ国が、それをもたない国々に対して地政学上の主導権を握るだろう」と指摘している。
EVの販売シェアでも中国は世界の60%を占め、EVの基幹部品であるリチウムイオン電池も80%が中国で生産されている。ドローンなどにも不可欠な電池の「信頼できるサプライチェーン」を構築することは、日米欧にとって共通の安全保障上の課題だ。
欧州は、2035年にハイブリッド車を含むエンジン搭載車を全面的に禁止する予定で、自動車業界の急速な脱炭素化を進めるが、原材料・部品を中国に依存することを避け、規制を強化し、環境性能が劣ることを理由に中国製品をEU市場から締め出すことで、EU発の企業の成長を支援しようとしている。EUは2017年に官民で「バッテリー連合」を結成し、スタートアップのノースボルト(スウェーデン)に巨額の資金支援をするなどして域内生産を後押しする。
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