中国は2021~2022年の2年間でアメリカからの輸入を2000億ドル増加させると約束した。しかし、実際の輸入額は目標を大きく下回るため、今回、その履行を求めるということだ。一方で中国の国家資本主義的な経済政策を批判しつつ、他方で、国家の義務として輸入増という「管理貿易」を求めるアメリカの立場は矛盾をはらんでいる。
2つ目の301条に基づく関税の除外措置は、トランプ政権で講じた一定の除外措置の期限が昨年末に到来し、産業界から再開の要望が高かったものだ。中国以外から入手が困難な場合などに対象を絞って除外が認められるが、過去の除外措置の再開に加え、新たな適用除外を認める可能性も示唆した。
除外措置は実質的に対中関税を低下させる効果があり、対中交渉の材料となりうる。しかし、ライトハイザー前通商代表などのアメリカ企業もほかの代替手段を用意する時間はあったはずで、現時点での除外措置は不要との意見もあり、なし崩し的な拡大には制約がある。
「第2段階の貿易交渉」という言い方を避けたタイ代表
3つ目の「あらゆる手段を用いて、中国の有害な貿易慣行からアメリカの利益を守る」という点は、あいまいだ。301条に基づく調査を新たに行って追加関税を課し、それをテコに対中交渉すべきとの意見はあり、タイ通商代表もその可能性を否定はしない。
しかし、習近平体制下の中国は、反発して構造改革を行わずに、対抗して対米関税を引き上げるだけという可能性もある。結局、タイ通商代表は具体策を示さなかった。また、タイ通商代表は「第2段階の貿易交渉」という言い方を避けた。中国側は構造問題を中心に据える第2段階の交渉を拒否していると思われる。
4つ目の、同盟国等の協力は、トランプ政権との差別化ポイントだが、心もとない。アメリカ品の購入義務の履行強制は「貿易転換効果」で、同盟国等から中国への輸出の減少につながる。また、アメリカの通商拡大法232条に基づき同盟国も含めて鉄鋼・アルミに輸入関税を継続していることは、「保護主義」の誹りは免れず同盟国との協力とも相いれない。
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