そうなのだ。観客や運営スタッフやボランディアや報道陣など会場内のすべての人間にワクチン接種完了が義務づけられているが、選手だけはATPやWTAといったプロツアーを統括する団体からワクチン接種義務を課されておらず、例外なのだ。
中でも23歳のチチパス選手は、オハイオ州シンシナティで行われた大会で、自分が未接種であることを公言し、プロツアーを統括する団体ATPが義務化しないかぎりワクチン接種しないつもりだと発言していた。ランキング上位で影響力のある彼の発言は、ギリシャ政府から問題視され、結局、彼は今年中にはワクチンを受けるつもりだと発言するに至った。
NBAバスケやNFLフットボールなどのプロ選手の9割以上が接種完了している一方、テニスのプロ選手のワクチン接種率は8月末で5割程度、10月の段階でも7割以下だと見られている。
通常より選手と触れ合える大会に
大会会場内にはコロナ検査をする大手企業クエスト・ダイアグノスティックス社の検査会場が設置されており、選手はいつでも検査を受けることができるが、検査会場を見てもいつもほぼ誰もいなかった。
選手同士は同じロッカー・ルームをシェアするわけで、接種済みの選手が未接種の選手と接するのは怖くないのだろうか。
「われわれやボール・パーソンだけでなく、売店でハンバーガーを売る人や会場の清掃係から駐車場の誘導係まで、大会に関わる1人ひとり全員が接種義務を果たしているのに、選手だけ免除とは……」と語るヨーロッパのメディア記者もいた。
今回出場した選手たちの中では、怪我から復活したイギリスのアンディ・マレー選手が会見などでもワクチン接種を受けることを奨励していたが、個々の試合後の記者会見の中で、各選手に接種の有無を聞く記者はほとんどいなかった。
そんな状況下で、今大会は、例年よりも観客の数が少ない分、観客が選手と直に触れあえるチャンスがかなり多かった。
ワシントン州からやってきたアレクシス・モルドバンさんと姉のアグネスさんは、この大会を観戦するのは初めてで、どの試合中も大声で応援し、多くの選手から直接サインをもらっていた。
「昨年はロックダウンで自由に出かけられない日々が続いていた。この大会のチケット代はすごく高かったけど、思い切って来てよかった。ワクチン接種の義務がある分、本当にテニスが好きな客しか来ていないから」とアレクシスさんは言う。
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