ドラッカーさんは大好きなフェデラー選手の顔写真が印刷されたマスクをネット上で特注してこの大会に備えた。
会場では観客にマスク着用義務はない。よって8割以上の客はマスクをしていない。それでも彼女は「ワクチン接種が済んでいても、ブレークスルー感染する可能性はあるから」とマスクを決してはずさない。摂氏40度近い砂漠の乾いた熱気の中で、何時間もマスクをし続けるのは、かなりの忍耐力だ。
孫がいる年齢だと自らを語るドラッカーさんは、マスクをはずす心地よさよりも、我慢してでも安全を取ると決めているそうだ。
専用アプリで接種状況を「管理」
この大会がワクチン接種完了の証明用に使用したのは「CLEAR」という専用アプリだ。まずこのアプリを自分のスマホにダウロードし、アメリカ疾病対策センター(CDC)が発行したワクチン接種証明書の写真を撮影してアップロードする必要がある。
ワクチン証明書がフェイクではなく正規のものであると承認されると個人の名前、生年月日の確認作業の画面に進んだ後、「ワクチン完了済み」という文字表示とQRコードが画面に出る仕組みだ。
「会場に入場する時に、毎回このアプリをゲートで見せるんだけど、紙のワクチン証明書を持ち歩かなくていいから便利」とドラッカーさん。ちなみに、チケットを買う段階で、すでに接種完了していることが求められたという。
会場内で実際に何人かの客にこのワクチン証明を見せてもらったが、誰もがスマホを操作して1~2秒ですぐ表示できるほどこのアプリの扱いにすでに完全に慣れていた。
アメリカのプロテニスの試合の観客は一般的に中高年が多いが、彼らはこのアプリだけでなく、駐車場入場やチケット用の複数のアプリを使いこなしている。そのデジタル・リテラシーの高さと適応力に感心する。
チケットは100%デジタル化され、紙チケットは廃止。スタジアム前にある専用読み取り機にスマホをかざしてスキャンして入場する。鞄の持ち込みは、中身が見える透明なバッグしか許されていない。
コロナ以前の2019年に開催されたインディアン・ウェルズ大会の総観客数は約47万5000人だったが、今年はワクチン接種が義務という縛りがあるせいか、総観客数はその約半数の23万人程度だ。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら