鬼滅や呪術廻戦がツイートされまくる事の重み キャラクターと貨幣の類似性はどこにあるのか

著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

かつて歴史上で生まれた2次元キャラクターで最も大きな経済圏を築いたのは何だろうか。それはミッキーマウスでもスターウォーズでもない。ポケモンである。拙著『オタク経済圏創世記』で最も耳目を集めた図は、世界中のキャラクター経済圏の規模を示した図であった。

(出所)『推しエコノミー 「仮想一等地」が変えるエンタメの未来』(日経BP)

旧時代貨幣『ポケモン』の復活

ポケモンは1996年にゲームボーイで登場して以来25年間、「平均」で年4000億円以上稼ぎ、累計で10兆円もの経済圏を作り上げてきた史上最大のキャラクターである。2020年度時点で、家庭用ゲーム約50種類で累計3億6800万本、モバイルゲーム約10種類、アニメは約1200話、カードゲームは累積304億枚、すでに数万種類に及ぶだろうグッズに展開され、パズドラの10倍を超える規模となる。

このポケモンの版権元である株式会社ポケモン(ポケモンの原作3社であるゲームフリーク、任天堂、クリーチャーズが共同出資で設立)が、実は2010年前後は赤字に苦しんでいた時代があった。次の図のように、株式会社ポケモンの2007年の純資産は60億円、世界一のキャラクターを資産としてもつ企業としてはあまりに心もとなかった。さらには2009年から2011年の3年間は赤字すれすれの業績である。世界一の収益キャラクターIPをもっている企業においてすら、ブームから十数年が立ち、「キャラクター貨幣の交換」がなされなくなると、儲けることは難しくなった。

(出所)『推しエコノミー 「仮想一等地」が変えるエンタメの未来』(日経BP)

だが絶え間なく「運営」を続けていれば、いつしか神風が吹く。2016年7月にアメリカ・ナイアンティックからリリースされた『ポケモンGo』は、全世界で10億を超えるユーザーを集め、その後毎年1000億〜2000億円の収益を稼ぐ世界のトップアプリになった。株式会社ポケモンの業績も急上昇した。

『推しエコノミー 「仮想一等地」が変えるエンタメの未来』(日経BP)。書影をクリックするとアマゾンのサイトにジャンプします。紙版はこちら、電子版はこちら

ライブコンテンツの要諦は、その商品について、どんな商流でもよいから「思い出させる」動きを展開し続けることだ。それがデジタルでスマートフォンに入って、毎日ログインするものであれば、その効果はポケモンGoのように表れる。

「手元においてもらう」がキャラクタービジネスにとっての本義である。それは職場の机を彩るフィギュアであってもかまわない。モバイルの中にあるガチャで手に入れたキャラクターコレクションでもかまわない。

推しのためには、コンタクトポイントをファンの周辺3メートル以内に置いてもらう必要がある。そして貨幣は流れ出す。ポケモンは20年ぶりに、そのキャラクターの基軸通貨となってよみがえってきたのだ。

中山 淳雄 エンタメ社会学者、Re entertainment代表取締役

著者をフォローすると、最新記事をメールでお知らせします。右上のボタンからフォローください。

なかやま あつお / Atsuo Nakayama

エンタメ社会学者。事業家(エンタメ専業の経営コンサルRe entertainment創業https://www.reentertainment.online/やベンチャー企業役員(Plott、ファンダム)をしながら、研究者(早稲田博士・慶應・立命館大研究員)、政策アドバイザー(経産省コンテンツIPプロジェクト主査、内閣府知財戦略委員)などを兼任し、コンテンツの海外展開をライフワークとする。以前はリクルート・DeNA・デロイトを経て、バンダイナムコスタジオ・ブシロードで、カナダ・シンガポールでメディアミックスIPプロジェクトを推進&アニメ・ゲーム・スポーツの海外展開を担当。著書に『クリエイターワンダーランド』『エンタメビジネス全史』『エンタの巨匠』『推しエコノミー』『オタク経済圏創世記』など。

この著者の記事一覧はこちら
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

関連記事
トピックボードAD
ビジネスの人気記事