地獄という表現が大げさに聞こえるかもしれないビジネスマン読者のため、ここで筆者自身の経験を少しお伝えしたい。
核家族のわが家では、第1子、第2子出産後の1カ月、産後ケアを外注した。食事作りなど家事全般をベテラン主婦のヘルパーさんにやってもらう。夫もできる限りのことをしたが、それでも夫婦だけで回すのは大変だった。出産前まで猛烈サラリーマン同然に働いてきて、生理が止まる経験までしたが、そんな仕事と比べても、新生児育児の大変さのほうが上回っていたと言える。
「お前ひとりで、子どもを育てられると思うか?」
話を麗子さんに戻そう。第2子出産後も、夫が家のことを何もしないのは変わらない。加えて前述の月イチ帰省。麗子さんは、夫が外で働き、妻が家庭を守るというスタイルは受け入れられたが、家事育児の意義や大変さを夫が理解しないことや、実家優先の態度は受け入れられなかった。
「夫は、自分の子どもたちとどう生きるのかではなく、実家のほうにいつも軸足があった」。
結婚以来、夫は事あるごとに「実家のある町で暮らす」プランを口にした。舅と姑はいい人だが、同居を前提にした未来図を描かれるのは苦痛だった。それでも、もし夫が「何かあったら、自分たち家族を最優先にしてくれる」という確証を示してくれたら、譲歩したかもしれない。
「同居そのものが嫌というより、『お前(妻)が折れればいい』と思っている夫の考え方に反発を覚えたのかもしれません」と麗子さんは言う。口論になるたび夫からは「お前ひとりで子どもを育てられると思うのか?」と言われた。この言葉は夫婦の溝を深める。
気持ちのすれ違いが重なり頂点に達したある日、麗子さんは子ども2人を連れて家を出た。第2子が1歳になった頃のことである。1カ月実家に行き、夫の電話にも出ずメールにも返信せず、音信不通を貫いた。しばらく経って、メールでやり取りを再開。この頃、麗子さんは便箋13枚にわたり夫に対する気持ちをつづっている。
離婚しようか悩んでいた頃、当たると評判の占い師のところへ行った。占い師は麗子さんの顔を見るなり「あなたの中身は男です」と言い切った。
「気が強い、と言われて、本当にそのとおりだと思いました」。夫婦関係の悩みを打ち明けると、占い師からは手厳しい答えが返ってきた。「あなたたちは話し合いが少なすぎる。それで夫婦の危機なんて甘い!」。
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