旭硝子が迷い込んだ、建築用ガラスの袋小路 社内でくすぶる現経営陣への不満
今回のリストラは、部門ごとに目標を定めて、生産性が低いと経営幹部が判断した部署で重点的に実施すると見られる。その筆頭と目されるのが、東京・東上野のオフィスビルに入居する、建築用ガラス関連の事業群である。
建築用ガラスの国内市場規模は推定2000億円。旭硝子はシェア約4割を握る最大手だ。これに、シェア約3割の日本板硝子、同約2割のセントラル硝子が続くという構図となっている。
長引く建設不況の影響で、需要先であるゼネコンや不動産デベロッパーは効率最優先の姿勢で購入先を見直してきた。旭硝子と同じ三菱グループに属する三菱地所も「十数年前ならすべて旭硝子から調達してくれたが、いまは3~4割が別のブランドだ」(前出の年配社員)。
こうした中でガラス各社はここ数年、販売数量優先の営業合戦を繰り広げてきた。その結果、建築用ガラスの販売価格は下落の一途をたどっている。そこに、アベノミクスによる急激な円安進行が直撃。燃料や電気代、配送費は一段と上昇した。
最大手の旭硝子でも、建築用ガラス事業の赤字幅は年々拡大している。「カンブリア宮殿」で紹介された、全長600メートルという世界最大級のガラス一貫生産ラインを持つ鹿島工場も、消費増税前の駆け込み需要でフル生産だった2013年度ですら赤字だった。
その一方、中国など海外で生産されている外壁一体型の外装材・カーテンウォールが日本のゼネコン業界の目に留まり、ビル施工への導入が増え始めていた。大量に生産される安価な海外産ガラスとの競合にさらされ、国内産ガラスは汎用品では利益を生み出せず、省エネや低反射性能など高付加価値化で生き残りを図らざるをえなくなった。
石村社長が犯した判断ミス
こうした厳しい環境下、石村社長は十分な根回しを行わなかった結果、いくつかの判断ミスを犯している。その1つが、三菱地所の木村恵司社長(当時)から持ちかけられて即断したとうわさされる、新丸の内ビルディングへの本社移転だ。
老朽化した新有楽町ビルから2011年8月16日に移転。30~34階の超高層フロアにガラス張りの意匠性に凝ったスペースを構えた。従業員の満足度が高まっていると“移転効果”を口にする社員もいるが、「新丸ビルの賃借料が重荷になっている」との指摘もある。
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