東洋経済オンラインとは
キャリア・教育

「廃棄野菜のクレヨン」で一発逆転シングルマザー 2000円する商品が「15万セット販売」の大ヒット

20分で読める
2/8 PAGES
3/8 PAGES
4/8 PAGES
5/8 PAGES
6/8 PAGES
7/8 PAGES
8/8 PAGES

最終日、会場に行くと、NHKの『おはよう日本』の取材陣が待ち構えていて、生中継に出演することに。その日は一日中、NHKを観た人たちが殺到した。なにがなんだかわからないまま3日間を終え、翌日、手元の名刺を数えたら1500枚あったそうだ。3日間、現場でサポートした東一文具工業所の水谷さんは、「こんなことがあるのかと思いました」と振り返る。

大企業とコラボすることも(筆者撮影)

木村さんのメールには毎日数えきれないほどの問い合わせが入り、さらに、テレビを見た問屋や一般の消費者から、ひっきりなしにオフィスに電話がかかってきた。最初に作った2000セットは、2週間で卸先が決まった。

この話を聞いて、「ギフト・ショーの3日間は、木村さんの人生を変えましたね」と言ったら、木村さんは大きくうなずいた。

「東京での3日間を例えるなら、シンデレラが階段をのぼっていくようなイメージでした。今まで知らなかった世界が見えたというか。それぐらい、自分の人生で衝撃的な体験でした」

SDGsがさらなる追い風に

テレビで取り上げられてヒットするものは、珍しくない。しかし、一過性のブームで終わってしまうものも多い。そのなかで、おやさいクレヨンはメディアに消費されることなく、支持され続けた。発売した2014年の1年で2万セットを販売すると、翌年、ドイツの国際見本市「アンビエンテ」に出展した際に韓国の企業と代理店契約を締結。これによって販路が韓国、中国、台湾、香港、シンガポール、タイに広がった。この7年、日本でも注文が絶えることはなく、冒頭に記したように、デビューから現在に至るまで、毎年、同じくらい売れている。

そして、忘れてはならないのは、廃棄野菜・果物のリサイクル。クレヨン1色につき、約180キロの野菜と果物が必要で、10色だから1800キロ。これが15万個ということは、これまでに27万トンの廃棄野菜と果物を再利用していることになる。

『ウルトラニッチ 小さな発見から始まるモノづくりのヒント』(書影をクリックすると、アマゾンのサイトにジャンプします)

近年の世界的なSDGs(Sustainable Development Goals/持続可能な開発目標)重視の流れのなかで、ビジネスの世界でもおやさいクレヨンの存在感は増している。最近では、フコク生命100周年事業「THE MUTUAL Art for children」第2弾に採用されたほか、複数の大企業、組織とのコラボレーションが控えている。さらに、2021年はアメリカ進出も計画する。

現在、「mizuiro」の社員は1名、パートと外部のスタッフが計4名。シングルマザーが率いるこの小さなベンチャーが名だたる企業とコラボして、海外でも市場を拡大しようとしている。僕はそこに、モノづくりの大きな可能性を感じた。

「クレヨンを作り始めるまで年収は200万円ぐらいで、貯金ゼロだし、コネもないから、モノづくりをしたいと思っても、自分には無理だと思ってたんです。それが今、東京の大企業と一緒に仕事をしているなんて、なんかすごいことになったなって、たまにふと思うんですよ。この道のりが誰かの希望になったら嬉しいですね」

木村さんがひとりで必死に守り、育ててきた娘は、この春に高校3年生になった。目指しているのは東京の美術系大学で、将来の夢は「文具メーカーで働くこと」。「でも、うちじゃなくて、もっと大手に入りたいって言うんですよ」と苦笑する木村さんは、とても幸せそうだった。

こちらの記事もおすすめ

あなたにおすすめ

キャリア・教育

人気記事 HOT

※過去1週間以内の記事が対象