ディズニーシー、開業までの苦闘と20年の歩み 当初は海ではなくスタジオパークの計画だった

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目下、開発を進めるのが2023年開業予定の新エリア「ファンタジースプリングス」。ディズニー映画『塔の上のラプンツェル』などがテーマで、追加投資として過去最高額の2500億円を投じるビッグプロジェクトだ。

構想は両パークの入園者数が3000万人を超えた2014年ごろから始まった。ランド開業後と同じく、予想を上回る人気から大規模な拡張が求められていたのだ。

すでに模型やイメージによる動画を公開しており、コンセプトやストーリーなど、日本オリジナルの要素が多く含まれているという。新エリアの開業でパークの収容人数は増加し、混雑も一定程度緩和できる見通しだ。約500億円の売上高増加を見込んでいる。

「強気の値上げ」に透ける自信

オリエンタルランドは足元、1デーパスポートの値上げを発表している。10月1日以降、18歳以上の大人は7900~9400円の4段階とし、価格変動幅を広げた。平日と休日の区別だけでなく曜日や気候なども考慮し、日ごとに料金を設定している。

入場制限に加えてゲストもディスタンスを保つなど、例年より落ち着いた雰囲気の周年イベントになっている(記者撮影)

「強気の値上げ」とも指摘されるが、満足度調査と価格感度の調査をつねに行い、そのうえで料金を決めている。背景にはシーの新エリアなど、今後も大規模な投資を継続し、さらに満足度を引き上げる自信もあるのだろう。

6月に就任した吉田謙次社長は新エリアのプロジェクトを推進してきた人物。「厳しい経営環境だが、成長投資は継続しており工事も順調に進んでいる。ファンタジースプリングスはコロナ後の会社の再成長に向かう希望の星。この先の成長戦略でも最大限に活用していく」と語る。

紆余曲折を経て20周年の節目を迎えても、シーにとっては単なる通過点。新エリアの構築はもちろん、コロナ収束後の復活にも備える必要がある。きらびやかなテーマパークの運営は、パークの課題に日々向き合い、ゲストの満足度を高める作業の繰り返しなのだ。

田邉 佳介 東洋経済 記者

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たなべ けいすけ / Keisuke Tanabe

2007年入社。流通業界や株式投資雑誌の編集部、モバイル、ネット、メディア、観光・ホテル、食品担当を経て、現在は物流や音楽業界を取材。

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