「1円でも安く」と何店もスーパーを回る人の盲点

「もったいない思考」が合理的な判断を鈍らせる

労力に見合った価値が本当にあるのかを考えてみると……(写真:sasaki106/PIXTA)
「もったいない精神」で合理的な行動をしたつもりが、結果的に判断を誤ってしまった――。そんな事態を避けるには会計的な思考が役に立ちます。『YouTuber会計士がゆる~く教える会計「超」入門 ぶっちゃけ会計のことがまったくわかりません…』を上梓した小山晃弘氏が解説します。

「ここでやめたら過去の投資がすべて水の泡」

イーロン・マスクが構想している次世代型長距離移動手段のハイパー・ループは時速1000km以上で走行するというものです。しかし、いまから30、40年も前に時速約2500kmも出る長距離移動手段があったことをご存じでしょうか。そう、音速旅客機コンコルドのことです。従来のジェット旅客機の2倍の速さでパリーニューヨーク間、ロンドンーニューヨーク間をつないでいました。

しかしコンコルドは2003年に全機が退役しています。2000年に起きた事故の影響で客足が遠のいたことが直接的な引き金となりましたが、そもそもビジネスの構造上、「飛べば飛ぶほど赤字が膨れ上がる」という、まったく収益の見込めない事業だったのです。

たとえば、大きな商圏として見込んでいたアメリカ国内の移動での利用は、超音速がゆえの騒音の大きさから許可がおりませんでした。また空気抵抗を減らすために胴体をスリム化した結果、一度に運べる乗客の数は限られていました。その結果、チケット代が高くなる一方でその価格に見合う快適さを提供することができなかったため「時短」というメリット以外で顧客を満足させることもできませんでした。

1969年からフランスとイギリス共同の大型プロジェクトとして推進されてきたコンコルド事業は、結局、巨額の赤字を抱えたままその幕を閉じたのです。

「こんな事業はさっさと中止したほうがいい」という声は、プロジェクトの内外で挙がっていたそうです。しかし、それまでに投じてきた時間とお金があまりに膨大なために、「いまここでやめたら過去の投資がすべて水の泡になる!」という理由で、プロジェクトは続けられてきました。

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