「1円でも安く」と何店もスーパーを回る人の盲点 「もったいない思考」が合理的な判断を鈍らせる

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「もったいない精神」でよく失敗する人に共通するのは、過去に行った「現金の出」というひとつの事象に執着してしまうことです。単眼的なものの見方、ともいえます。

一方で、会計の基本を一通り学ぶことで身につく会計的思考では、物事を複眼的に捉えることが前提になります。

たとえば、私がその映画を見出していたとしたら、「あ、500円損した」と一瞬は思いますが、そのあとすぐに「あと1時間半もあるのか。じゃあどんな生産的なことができるかな」と考えます。

資格試験の勉強をする。ジムに行く。読書をする。「500円がもったいない」という発想をさっさと捨てれば、このように選択肢はいくらでもでてきます。そこからさらにそれぞれの選択肢がもたらす価値を概算して、いまの自分にとって最善のものを選ぶ。もちろん、わざわざエクセルを開いて厳密な計算をするわけではないですが、できる範囲で合理的な判断を下せるように意識しています。

「会計的思考」を身につけるとできること

このように会計的思考が身につくと埋没原価を切り捨てるだけではなく、「複数の選択肢があったときのそれぞれのコストとリターン」を想定できるようになります。これを「機会原価」といいます。

ものすごく簡単に説明すれば、会計的思考を身につけている人はお金や時間などを何かに投資する際に、ほかにとりうる選択肢を複数考え、それぞれの結果を予測したうえで天秤にかけ、行動を選択しているということです。

企業が大きな投資を行う際も当然ながら機会原価の計算をすべきですが、慣れてくれば自分の日ごろの時間やお金の使い方も機会原価を意識しながら選べるようになるものです。

機会原価を意識する癖がつくと、仮にもったいない精神が発動して「500円が……」という気持ちを引きずってしまったとしても、たとえば「資格試験に1時間半あてれば500円以上の価値は余裕で生み出せる」と自信をもっていえるので、非合理的な判断を避けることができるのです。

「もったいない」という言葉はお金や資源を大事にする「節約」的なイメージともひも付いているため、経済合理的な考え方だと思っている方もいらっしゃるかもしれません。しかし、必ずしもそうではありません。

むしろ、「もったいない精神」が合理的な判断を妨げているケースが多いのです。

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