「1円でも安く」と何店もスーパーを回る人の盲点 「もったいない思考」が合理的な判断を鈍らせる

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ではコンコルドの関係者は本来どのような意思決定をすべきだったのでしょうか? 

ここでぜひ知っていただきたい概念が、会計の世界でよく使われる「埋没原価(サンクコスト)」です。埋没原価とは「意思決定において無視すべきコスト」のことを指します。コンコルド事業が行ってきた過去の投資のように「回収が見込めないコスト」も埋没原価に含みます。つまり、意思決定において無視すべきだったのです。

もしコンコルド事業の関係者が過去を振り返らず、「現在と未来」だけを見ていれば、撤退によるデメリットは「撤退にかかる費用」になります。一方のメリットは「赤字の止血」と「技術を含む経営資源の他分野への応用」といったものです。

本来ならこれらを天秤にかけてどっちが得かを考えなければならないのに、「過去に行った投資」を意思決定に含むことによって撤退のデメリットがあまりに重くなって、いつまでも撤退できない。これこそがコンコルドが陥った罠でした。ギャンブルや株式投資などで負けが膨らんだときに損切りできず、傷口をさらに広げてしまう状況と似ています。

「もったいない精神」が合理的な判断を鈍らせる

このように「もったいない」というバイアスによって非合理的な意思決定をしてしまう現象のことを、同プロジェクトにちなんで「コンコルド効果」といいます。

コンコルド効果は日常でもよく起きることです。たとえばある映画に500円課金して視聴を始めたものの、期待に反してつまらなそうな作品だったとします。ここで多くの人は「もしかしたら後半に話が一気に面白くなるはずだ」と自分に言い聞かせながら最後までみて、激しく後悔するといったことがよく起きます。

これもまさしくもったいない精神が合理的な判断を鈍らせた結果と言えます。

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