このような活発な動きの背景にあるのは、テレビ東京の企画力だと思う。元テレビ東京のプロデューサー、佐久間宣行は自著『できないことはやりません~テレ東的開き直り仕事術~』(講談社)において「お金や人材では他局との間に圧倒的戦力差がある以上、同じ土俵で勝負しても勝ち目はありません」としたうえで、こう語っている。
「お金がないから内容や企画で勝負」
これがテレ東のDNAに刻まれた「テレ東らしさ」です。
深夜ドラマの企画力が他へ波及
加えて興味深いのは、テレビ東京の最近の深夜ドラマでは、ドラマの内容だけではなく、ドラマを軸とした広告や他メディアとの連携構造、言わばビジネススキームにまでに、企画力が発揮されている点だ。
『お耳に合いましたら。』は、主人公・高村美園(伊藤万理華)が「ポッドキャストパーソナリティ」という設定になっていて、「チェンメシ」の魅力について、Spotifyで語るシーンがドラマ内に埋め込まれている。さらには、ご丁寧にもその音源がSpotifyに用意されていて、実際に聴くことできる。つまりは「チェンメシ」だけでなく、Spotifyのプロモーションにもなっている。
AdverTimesの記事「『八月のシンデレラナイン』ドラマ化の思惑 広告vsコンテンツの枠を超えて」(8月25日)によれば、『八月の夜はバッティングセンターで。』は、スマホ向けゲーム『八月のシンデレラナイン』(ハチナイ)のマーケティング施策の一環として企画されたものだという。
『ハチナイ』は「野球型青春体験ゲーム」らしいのだが、ここで注目すべきは、ドラマの内容がゲームをダイレクトに反映したものではなく、適度な距離感を持っていて、結果、先に書いたように、ドラマとしても自立的な魅力を保っていることである(後継の『東京放置食堂』も、ゲーム『放置少女~百花繚乱の萌姫たち~』が「原案」なのだが、内容はかなり独自のものだ)。
『サ道2021』で流れる、サウナを舞台とした生命保険のCMも含めて、つまり、「テレビで見たことのない、けど、見たくなるもの」を軸として、ドラマと広告と他メディアとの新しい連携のあり方を生み出すのが、現在のテレビ東京ならではの企画力であり、ひいてはシン「テレ東らしさ」なのだ。
気がつけば私は「テレ東が大好きであらゆる番組を毎週欠かさず見てくださるテレ東ファンの方々、テレ東マニア」になったのかもしれない。もう54歳なので「コア層」に入れてくれない局も多いようだが、「テレ東コア」にはカウントされそうな感じだ。
秋からのテレビ東京に期待が高まる。深夜ドラマの企画力が他の時間帯にも波及して、いよいよ実体化していくシン「テレ東らしさ」と、それに惹かれる「テレ東コア」、ひいては「テレ東ハードコア」層が、局の命運を握る秋へ。
記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
印刷ページの表示はログインが必要です。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
無料会員登録はこちら
ログインはこちら