総裁選、「高市氏の言葉」にネット民が熱狂する訳 コア支持者層をくすぐる「5つのコミュ力」とは

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有権者が政治家を選ぶ大きな理由、それは次の2つです。

①この候補者、政党は私と同じ価値観を「共有」しているのかどうか?
②私のような人を「理解」し、気にかけているのかどうか?

要するに、「いかに自分の気持ちを代弁してくれているかどうか」。そういった意味で、彼女はそのコア支持者層の思想やイデオロギーに同化し、逡巡なく、「耳障りのいい言葉」を紡ぎます

これは、まさにトランプ氏の手法でした。人は「事実」より、「感情を刺激する言葉」にあっという間に動かされてしまいます

ロジックだけの「政策」は、誇りや怒りといった感情を誘う「思想」や「イデオロギー」にはなかなか勝てません。「美しく、強く、成長する国へ」という情緒的なメッセージは、まさに「コアな支持者層の誇り」をくすぐり、エンパワーする絶妙なメッセージングと言えるでしょう。

「頭のいい人」より「いい気分にする人」が勝つ

コミュニケーションにおいては、「いい人」や「頭のいい人」より、「(聞き手を)いい気分にする人」が結局、勝つものです。

自分の思想を肯定し、最高に「いい気分」にしてくれる高市氏に超保守派層が雪崩を打ったように傾倒していくのは、火を見るより明らかです。

支持者層が異様なまでに活気づき、ニュースサイトのコメント欄やソーシャルメディアをジャックし、対抗馬に対する批判も苛烈を極めています。つまり、もはや彼女以外の候補者は「野党」かのような扱いぶり。その声の大きさが、世論に影響を与える可能性はあるかもしれません。

主張はタカ派でも、口調はハト派。エモーショナルな言葉も操る一方、当意即妙に歯切れよく政策を語り、ロジック構築をする力も抜群。そうした戦略性はこれまでの政治家には見られなかった底知れない不気味さを秘めています。

メディアも他の候補者も、「泡沫」と見ているようですし、確かに今回の総裁選は難しいかもしれませんが、彼女がその先を見据えていることは間違いないでしょう。見くびるのは早計のような気がします。

岡本 純子 コミュニケーション戦略研究家・コミュ力伝道師

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おかもと じゅんこ / Junko Okamoto

「伝説の家庭教師」と呼ばれるエグゼクティブ・スピーチコーチ&コミュニケーション・ストラテジスト。株式会社グローコム代表取締役社長。早稲田大学政経学部卒業。英ケンブリッジ大学国際関係学修士。米MIT比較メディア学元客員研究員。日本を代表する大企業や外資系のリーダー、官僚・政治家など、「トップエリートを対象としたプレゼン・スピーチ等のプライベートコーチング」に携わる。その「劇的な話し方の改善ぶり」と実績から「伝説の家庭教師」と呼ばれる。2022年、次世代リーダーのコミュ力養成を目的とした「世界最高の話し方の学校」を開校。その飛躍的な効果が話題を呼び、早くも「行列のできる学校」となっている。

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