2つめのポイントは、「救世主」としてのポジショニングを確立するため、「ある言葉」を多用したことです。
「女性リーダー」の難しい側面を見事に回避
彼女が多用した言葉。それは「守る」でした。冒頭、「生命と財産を守り抜くこと、領土、領海、領空、資源を守り抜くこと、国家の主権と名誉を守り抜くこと。私のすべてをかけて働くことをお誓い申し上げます」と力を込めて言い切ったほか、「命、金融資産、個人情報を守り抜く」「日本の平和を守るため」「世界の平和を守るため」と「守る」を連呼しました。
「さまざまな脅威にさらされている日本を守るのは私しかいない」というアピールであり、政治の旧弊を打破する役割を担うのは私しかいない、と「ジャンヌダルク的」ポジショニングを打ち出した小池都知事にも似た手法です。
まるで、何かの託宣を受けた巫女か、救国の士、あるいは教祖にでも憑依したかのような彼女に、思想を同じくする人たちは無条件に惹かれてしまうのでしょう。
女性リーダーのコミュニケーションは、実に難しい側面があります。私はかつて、今の政界の女性政治家には声を荒げて、怒りをぶちまける「上から目線系」か、男性政治家にすり寄り、猟官運動に励んでいるように見える「上目遣い系」が多く、ロールモデルになる人がいない、と「日本に『女性のリーダー』が生まれない深刻理由」で分析しました。
女性が強い調子で話し、怒りをぶちまければ、「ヒステリックだ」と嫌われ、弱々しく、優しすぎた印象だと、「リーダーシップがない」と批判されてしまう。「強さ」と「優しさ」のバランスを取るのが大変難しいわけですが、高市氏はこの女性特有の地雷を上手に回避している印象があります。
つまり、「口調は柔らかい」のに、主張を曲げることなく、「勇ましく言い切る」。硬軟をバランスよく見せているのです。
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