第3の間違いは、このマネタリストの圧力により「インフレターゲット2%」を日銀が導入してしまったことだ。
これが現在も日銀の金融政策を縛っている。欧米主要国の多くが2%ターゲットをとっているから、日銀だけそれをターゲットとして数量的な目標を設定しないのは無責任だ、という議論に押されて導入してしまった。
だが、日本ではそもそもインフレ率が継続的に2%を超えていたのは、1990年のバブルのときまでさかのぼらなければならない。しかも、その当時は、世界的に日本の物価は異常に高すぎるとして、物価をとにかく下げろ、内外価格差是正、ということが経済政策の大きな目標の1つだった。
すなわち、2%という「達成不可能なゴール」、かつ「達成されることは日本経済にとって非常に悪いことであるゴール」を設定することになってしまった。
この結果、日銀の政策は、いわゆるデフレマインド、実際のところは、貧乏くさい萎縮マインドを改善する、というある程度意味のある効果を伴ったときはよかった。だが、現在の異次元緩和の主人公である黒田総裁自身が「日本経済の問題は需要不足ではないことが明らかになった」と宣言した後、7年たっても、なお2%のインフレ率達成がゴールとされ続けている。
これは不必要どころか、副作用の大きいリフレ政策を行うことを強いられていることにほかならない。長期国債を大量に購入するという政策からの出口を議論できなくなってしまったという最大の困難をもたらしている。
さて、それ以外にも、日銀はさまざま過ちを犯している。第4として、上場株式ETF(上場投資信託)、REIT(不動産投資信託)というリスク資産を中央銀行が買うという前代未聞の政策を行った。これは、いかなる角度からも意味不明であり、200%いや1000%誤りである。
ただし、日経平均株価が8000円台などの場合には、株価下支え効果がてきめんにあった。実際、アベノミクスでは、円安誘導、異常国債買い入れとともに、株価の急回復をもたらした。
中央銀行が企業の株式を買うことは無意味
しかし、理論的には、意味がまったくないし、中央銀行が企業の株式を買うということはまったく意味がない。「リスクプレミアムに働きかける」というが、株式トレーダーのリスクプレミアムに働きかけることは理論的だけでなく、道義的、社会的にもやってはならないことであり、実体経済における設備投資や人的資本投資という実物投資行動へのリスクプレミアムに働きかけるものでなくてはならない。そこへ到達できる金融市場における唯一の道は金利であり、株価とは無関係である。
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