9月29日に投開票が予定されている自民党総裁選挙をめぐり、自民党内で駆け引きが続いている。9月3日には菅義偉首相が総裁選に出馬しないことを表明し、事態は一変した。
総裁選の後には衆院総選挙が控えている。新総裁は「自民党の顔」としてその勝敗を左右するとみられるだけに、その行方に注目が集まっている。
総裁選前に経済対策を提言できるか
菅首相は、総裁選に不出馬を表明する前の8月30日、自民党の二階俊博幹事長に追加経済対策の取りまとめを指示した。菅首相は総裁選には出馬しないため、総裁選期間中に経済対策を策定する作業を進めることは可能である。
ただ、21都道府県に出されている緊急事態宣言の期限を9月12日に迎える。宣言を延長するかどうか、延長するとしてもどんな内容の制限にするかを、遅くとも10日までには決めなければならない。その間は、経済対策よりも緊急事態宣言についての議論が中心となる。
経済対策について議論するとしても13日以降になるだろう。そして、17日には自民党総裁選が告示され、選挙戦に突入する。
すでに総裁選に立候補を表明している岸田文雄前政調会長は、数十兆円規模の経済対策を公約に掲げている。自民党内に経済対策を策定すること自体に疑義を呈する向きはなさそうだ。
しかし、総裁選を前に、自民党内で経済対策の具体的内容を取りまとめ、政府に提言することはできるのか。総裁選の各候補者が掲げる公約は、個別具体的な中身の詰まったものというより、大きな方向性を示すものであり、そのまま経済対策に盛り込むというわけにはいかない。しかも、各候補者は、投票日までは、経済対策の議論よりも票集めに注力するだろう。
総裁選前に菅内閣として経済対策を閣議決定できたとしても、それは菅首相の置き土産にはなるが、新総裁の意向が反映されたものとは言えない。どこまで正統性があるのか微妙なものとなろう。
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