経済対策は与党内の議論だけでは具体的内容まで詰めることはできない。そこに盛り込まれる事業について、所管省庁で政策意図や執行態勢なども詰めないと、閣議決定に持ち込めない。そうした調整や決定過程のために2週間程度はかかる。そう考えると、総裁選の前に経済対策を取りまとめるのは至難の業と思われる。
では、総裁選が終わった後なら経済対策を取りまとめられるだろうか。日程上の制約となるのが衆院議員の任期である。10月21日には任期満了を迎える。任期満了選挙を行うなら、10月20日までには衆院選を行わなければならない。そして、選挙の少なくとも12日前までに公示しなければならない。
日曜日の10月17日に投開票を行うなら、公示は遅くとも10月5日に行わなければならない。公示日以降は選挙戦に入るため、与党内で政策論議もできないだろう。
万人受けする経済対策は存在しない
自民党総裁選の後、9月30日から10月4日までの間に経済対策を取りまとめる可能性も残されている。しかし、任期満了選挙を行うならば、与党は衆院選の公約を策定する作業を優先することになろう。
もちろん、任期満了選挙とはせず、10月に衆院を解散して、11月に総選挙を行うならば、衆院選前に経済対策を取りまとめる時間的余裕が生まれる。
新総裁は臨時国会で首班指名を受けなければならず、10月には必ず国会が開かれる。新内閣を組閣してただちに衆院選というよりも、任期満了までの間ではあるが、腰を落ち着けて衆院選に臨むという可能性がある。そうなれば、衆院選の前に経済対策を取りまとめることもできよう。
衆院選の前に経済対策を取りまとめれば、与党候補はそれを土産に選挙戦に臨めるだろう。しかし、有権者からみれば、経済対策の内容だけでなく、これまでのコロナ対策も含む政策の賛否が衆院選で問われることになる。
経済対策が万人受けするような内容なら、衆院選前に経済対策を取りまとめたほうが与党にとって選挙で有利に働く。経済対策の中身は、コロナ禍で困窮した人や企業への救済策だけにとどまらず、コロナ収束後を見据えた景気刺激策も盛り込まれるだろう。
そうなると、GoToキャンペーンへの賛否が分かれたように、経済再開に賛同する有権者はそれを肯定的に評価するが、感染収束の優先を望む有権者は経済対策を批判的に評価するだろう。万人受けするような経済対策を策定するのは、容易でないことがわかる。
こうみれば、日程的に制約が厳しい経済対策の策定を無理に急ぐよりも、選挙後の経済対策の策定を衆院選の公約に掲げて臨んだほうが与党にとっては有利なのかもしれない。賛否が分かれる恐れのある具体的内容まで決めた経済対策を見せるよりも、内容にあいまいさが残りながら選挙後への期待感を高められる形で選挙公約にとどめたほうが有権者の受けがよいと判断すれば、自民党の新総裁は経済対策の策定を急がないだろう。
記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
印刷ページの表示はログインが必要です。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
無料会員登録はこちら
ログインはこちら