迎えた受検当日。「いってきます!」と、緊張した様子で志望校の門をくぐった亜矢さんの背中は、一回り大きく見えたという。
「え~、亜矢ちゃん、勉強なんかしてるの~」と、ひやかされる環境にはいたくない。私は勉強が好きなんだ。好きな勉強をして何が悪い――。
そう語ることもあった亜矢さんの気迫が勝ったのか、厳しい状況の中、「合格」の2文字を勝ち取った。
経済格差が生む教育格差
今、亜矢さんは、母親と同じ看護師の道を考え、国立の看護大への進学を考え始めているという。
「入学させてみると、会社経営者のご子息や、お医者さんのご家庭など、裕福な家庭のお子さんばかりだなという印象を受けています。わが家の場合は私の姉がつきっきりで指導をしてくれたので、なんとか進むことができたけど、もしだれの協力もなく、子どもが自力で目指していたら、とても難しかったと思います。結局、お金がある家庭の子は、よい教育を受けるチャンスも掴みやすい。世の中、理不尽ですよね……」
公立中高一貫校の受検に成功し、希望の学校に通う日々を手にしたものの、亜矢さんは不利な家庭状況という現実を再びつきつけられている。
私たちは、「公立=平等」という図式を思い浮かべがちだ。もちろん、日本の教育水準は世界と比べると高いと言える。だが、国内だけで比較した場合、地域や家庭の経済力による格差は歴然と存在している。
多額の費用がかかる塾には通えない、それでも、勉強が好きだという子どもたちでも難関大学へチャレンジする道。公立中高一貫校の開校には、もともとそんな希望も込められていたはずだが、現実は少し違うようだ。
中高一貫校の進学実績はどんどん伸びている。この理不尽な状況を、亜矢さんの通う小学校の先生たちはわかっていたのだろう。先生たちの支えも、亜矢さんの合格には大きな後押しになったと思われる。
経済的に苦しい家庭の子どもたちでも、難関国立大学を目指せる、公立中高一貫校がその役割を担う日がくることを願ってやまない。
記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
印刷ページの表示はログインが必要です。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
無料会員登録はこちら
ログインはこちら