「塾ゼロ中学受験」母子家庭の少女が直面した現実 母子家庭で地方在住、というハンデを抱え…

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自宅では、伯母の明里さんが学習の進捗具合を管理して支えた。公立受検の場合、小学校の教育課程で学習する範囲内からしか出題されないことになっている。とはいえ、頭をかなり柔軟に働かせなければ解けない問題が多い。思考力を高めるため、つるかめ算や植木算など、私立入試に出るような問題にも取り組むようにしていた。

「姉が全部見てくれました。姉がいなければ、中学受験はできなかったと思います」(茜さん)

塾に通ったことなどないため、小さい頃から塾に行っていた子と比べて、要領よく勉強するということも身についていない。そこで、勉強の効率的なやり方についても明里さんが指導した。

間違えた問題には付箋をつけ、繰り返し練習できるように整理。夕食の後も毎日2時間ほど、マンツーマンでの指導を続けた。伯母は出題傾向も分析し、学習計画を練り上げてくれた。

亜矢さんのほうも弱音を吐くことはなく、果敢に問題にチャレンジした。栄養面を支えたのは、祖父母だ。毎日温かいご飯を作って応援してくれたという。

秋からは自分の立ち位置を把握するため、塾が行う模擬試験にも挑戦した。しかし、合否判定の結果は「再考」、つまり、合格する確率は極めて低いという結果だった。

学校の成績は文句無しのトップだった亜矢さん。結果を見た亜矢さんは沈黙するばかりだった。その後も、入試直前まで模試を受けたが、いずれも結果は「再考」となった。

「再考をもらっても、受かる子は受かります」

模試を実施した塾が行う報告会には、通塾生の保護者でなくとても参加することができるため、茜さんは足を運ぶことにした。「合格圏内でも落ちる子は落ちますし、再考をもらっても、受かる子は受かります」。そう話す講師の言葉に、少し気持ちが上向きになった。

自分たちと同じようなケースはないかと、ネットの掲示板を探してみると、内申点も重視されるという情報が載っていた。内申は点数化され、持ち点となるのが一般的だ。亜矢さんは5年生のときから内申はすばらしくいい。当日の試験だけで決まるのでないのなら、チャンスはある。希望を胸に勉強を続けた。

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