いちばん近いコンビニまで車で5分、商業施設はほぼなく、中学受験のための塾もない。このエリアで、なぜ、亜矢さんは中学受験を目指すことになったのだろうか。
学力調査の国語は100点、突然言い出した中学受験
首都圏の場合、小学4年生あたりからの通塾は一般的で、なんとなく通い始めたら、塾のムードに乗せられて、本人が中学受験したいと言い始めるケースも少なくない。しかし、地方の村に住む亜矢さんの場合は、そうした環境にはまったくない。ところが、
「学校から私立中学のパンフレットをもらってきたんです」
首都圏の公立小ではあまり聞かない話だが、なんでも小学6年生の1学期に亜矢さんの住むエリアからでも通える私立の女子校のパンフレットが配られたと言うのだ。
「私、ここの学校行ってみたいんだけど……」
理由を聞くと、男子のいない、女子だけの環境に憧れたのだという。
亜矢さんは、通信教育の「進研ゼミ」に家で取り組んでいたものの、塾に通った経験はない。ただ、小学校での成績は抜群によかった。テストの点数はほぼ100点。まれに90点を取ることもあったが、高学年に入っても成績が落ちることはなかったという。
県の学力調査のときには国語の基礎と応用で、それぞれ満点を取っていた。教員生活20年というベテランだった担任も「こんな成績をとる子ははじめて見ました」と舌を巻くほどだったという。
「受験をしたいと言い出したのには“もっと難しい勉強をしたい”という気持ちもあったのかもしれません」(茜さん)
しかし、母親の茜さん自身は地元の高校と、専門学校を卒業しており、中学受験の経験はまったくない。そのうえ、母子家庭という状況で、私立の中学に通わせるのは経済的にも苦しい。
そこで、大卒の姉の明里さんに相談したところ、地元で進学校として名の通っていた公立高校が、近年は学業的にはかなり廃れていることがわかった。
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