ローカル路線バス「乗り継ぎ旅」はなぜ難しいのか 震災10年津波被災地をたどる・塩釜松島石巻編

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電車で本塩釜に戻り、駅横のイオンタウンからプロムナードデッキでつながっている「みなとオアシスマリンゲート塩釜」へ、5分ほど歩く。松島湾の入口部分には外松島とも呼ばれる浦戸諸島があって、湾内最大の島、宮戸島(東松島市)をはじめ湾口をふさぐような形で島々が散在している。震災時には自然の防潮堤の役割を果たしたのだろう。

本塩釜駅アクアゲート口。津波浸水深に注目(筆者撮影)

塩釜市中心部の津波被害は甚大ではあったが、太平洋に直接面している沿岸の各都市と比べると、まだ軽いほうだったように思われる。その代わり浦戸諸島の集落は壊滅的な損害を受けた。

朴島に停泊中の塩釜市営汽船(筆者撮影)
塩釜市営汽船からの風景(筆者撮影)

そうした島々の間を塩釜市営汽船が、有人の桂島、野々島、寒風沢島を経由し朴島まで、全区間45分で結んでいる。朴島からの始発は6時、塩釜発の最終は18時15分で金曜日のみ19時15分発もある。

1日最大8往復で、島の人々の通勤、通学に使われる生活航路だ。生活必需品から新聞、郵便物、宅配便の荷物まで、すべてこの船で運ばれる。9時30分発で朴島まで、片道630円支払って往復してきたが、工事関係者など用務客の乗船が目立った。

そして船から眺める風景は、変化が多く飽きなかった。いわゆる観光地の松島はJR松島海岸駅を中心とした一帯だが、それとは別。しかし、地形としては同じく丘陵地が沈降により海になったところで、浦戸諸島のほうがダイナミックに思えた。

コロナ禍で観光船は運休

塩釜市では観光開発に力を入れており、パンフレットなどによるPRに努めていた。コロナ禍の影響で、マリンゲート塩釜にも松島を巡航しているはずの観光船が多数、所在なげに係留されている。昨今の情勢は観光客誘致の面では痛手であるが、復活のあかつきには、より素朴な浦戸諸島にも光が当たってほしい。

マリンゲード塩釜と休航中の遊覧船(筆者撮影)
しおナビ市内循環バス(筆者撮影)

次はマリンゲート塩釜近くの塩釜郵便局入口バス停から、13時08分発の「しおナビ100円バス」の北回りをつかまえる。塩釜港の北側、水産加工団地や魚市場などが固まる地域も回るので、これに試乗したのだ。もう1つの市営バスで、「NEW〜」に対し、ミヤコーバスへの委託である点が異なる。

運賃はどちらも100円と格安だが、その点を除けば、こちらは一般の路線バスと変わらない。運行間隔も1時間1本、一方通行ではなく双方向に走る。仙台市交通局が発行するICカード「icsca」や、Suicaなど全国共通交通系ICカードも利用可能だ。高齢者中心だが、席はかなり埋まっていた。

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