ローカル路線バス「乗り継ぎ旅」はなぜ難しいのか 震災10年津波被災地をたどる・塩釜松島石巻編

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JR仙石線東塩釜駅に近い藤倉三丁目で降りて、鉄道の旅に戻る。順番から言えば、北隣は松島町だが、松島遊覧の観光船が公共交通機関かどうかは首をひねる。町営バスはあり、やはり町内をめぐっている。

松島町営バス(筆者撮影)

ただ、観光色はない。こちらには3月、海岸部の銭神、名籠、古浦といった集落に丹念に立ち寄ってゆく松島東線に、先に試乗した。

JRとの接続地点はJR東北本線松島駅前にある役場前だが、運行拠点は文化観光交流館前で、17時37分発に乗っている。ワゴン車の乗客は終始私1人。1日3〜4便でダイヤ上などで使いづらい面があるのだろうか。運賃は200円だ。

一般向け公共交通がない島

地形の上から言えば、次が先述の東松島市の宮戸島である。塩釜市営汽船からも姿が見えた大きな島で、本土とは橋で結ばれているが、この島には公共交通機関が船、バスともに通っていない。

最寄り駅は、津波で全滅に等しい被害を受け、丘陵地に町ごと線路も移転したJR仙石線の野蒜。けれどもタクシー以外のアクセス手段はなく、やむなくカットした。地図を見ると寒風沢島から目と鼻の先の地点もあり、塩釜市からの船が、あと少し足を延ばしてくれればと思わなくもない。

宮戸島に限らず、東松島市全域をカバーしているのが予約制乗合タクシー「らくらく号」だが、よくあるパターンで、市民もしくは市内への通勤通学者のみ登録制で利用できる。観光客が、気が向いたからと乗れるものではない。

JR仙石線の石巻あゆみ野駅付近(筆者撮影)

今回は東塩釜から石巻あゆみ野までJR仙石線を乗り通した。陸前富山や陸前大塚付近では間近に松島湾の風景をのぞめる。防潮堤がかさ上げされて見通しが悪くなったのはやむをえない。

石巻あゆみ野は東松島市と石巻市の市境にほど近い。震災後、大きく減りはしたものの、石巻市は人口約13万7000人を抱える宮城県第2の都市で、一定の経済圏を持っている。市内に入ったとたん、ミヤコーバスのかなり充実した路線網が広がっているのは面白い。ある程度の人口の集積があり、路線バスが成立する条件が整っているとも思われる。

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