ローカル路線バス「乗り継ぎ旅」はなぜ難しいのか 震災10年津波被災地をたどる・塩釜松島石巻編

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ただ、ミヤコーバスを含む宮城交通の情報提供の“薄さ”には、これまで何回も惑わされてきた。仙台市内は充実しているが、それ以外の地域だと時刻表はあっても路線網全体を見渡せる路線図が公式サイト上に見当たらない。

各地でよくある話なのだが、要するに「地理や利用すべきバス停名がわかっていないと使えない」のだ。ならば公式サイトではなく、地図も完備している各種の検索サイトで検索したほうが早いということになる。

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例えば、みやぎ東日本大震災津波伝承館の最寄りバス停は、石巻駅前に発着する山下門脇線の門脇4丁目だと、施設(目的地)の場所、バス停の位置、運転系統をすべてプロットした地図さえあればすぐ理解でき、時刻検索へと移れるが、そもそもその3要素が1つにまとまっていない。

今回は石巻市役所が製作したバスマップをネット上で見つけて全容がようやく把握できた。ミヤコーバスに限らず、それ以外の運営主体が走らせているコミュニティバスや乗合タクシーまで網羅しており、民間バスでは会社ごとにある“縦割り”を排したすぐれものだ。

市役所製作のバスマップは便利だが…

だが、こちらはこちらで行政の責任範囲はやはり市域内のみ。隣の女川町の情報は載っていない。そういう意味では、地図情報、時刻表情報、運賃情報を、運行市町村、運行事業者は関係なく、ある程度まとまりがある広域的に網羅した「MaaS」が望まれる事情はわかる。利用者の手元に情報が届きさえすれば、それがスマートフォンアプリである必要性は感じないが。

今回は、そのバスマップに大いに助けられ、石巻あゆみ野駅15時45分発の石巻免許センター線に乗れば海沿いに進めるとわかり、ロードサイド店が立ち並ぶ国道398号を走った。

ミヤコーバスの山下門脇線(筆者撮影)

いったん時間調整で石巻駅前まで行ってから、最後は16時50分発の山下門脇線で一周した。日本製紙石巻工場に隣接する南浜町は津波で町が丸ごと消失し、現在は全域が石巻南浜津波復興祈念公園になった。唯一の建物がみやぎ東日本大震災津波伝承館。この地を訪れるのは初めてではないが、夕暮れ時、数少ない客を乗せて走るバスから見渡す風景は、ひたすら寂しかった。

土屋 武之 鉄道ジャーナリスト

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つちや たけゆき / Takeyuki Tsuchiya

1965年生まれ。『鉄道ジャーナル』のルポを毎号担当。震災被害を受けた鉄道の取材も精力的に行う。著書に『鉄道の未来予想図』『きっぷのルール ハンドブック』など。

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