熱量を持っている部下には、仕事を任せる いかに任せるか、どう怒るか、を模索中

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塩野:怒っても響かない、ゆとり世代とかいないのですか?

須藤:物事をそういうふうにはとらえなくなりましたね。もう下の世代は自分とはまったく違う感覚で仕事に向かっている。その人に誰よりもコンテンツやアーティストに対する愛があって、なおかつお客さんのことを考えているなら、失敗しようと何しようと仕事を任せればいい。僕たちにとって失敗とは何かというと、お客さんに伝わらないことなので、そこに対して意識していないと怒ることはあるかもしれない。でも何かのミスに対しては怒らない。熱量があれば自分のミスがどの程度の重さか自覚できるだろうし、自分で挽回しようとするはずですよ。まあ、偉そうに言っているけれど、たぶん僕の上司も僕を今、そういう目で見てくれているんだと思います。

塩野:マネジメントの側になったけれど、いざとなればちゃんとクリエーティブなことができるんだぜ、プレーヤーにもなれるんだぜ、と下の世代に見せ続けるのは大変じゃないですか?

須藤:そうかもしれないですね。ただ僕はまだそこまで行ってない。極端な話、これ誤解されたくないんだけど、会社のみんなには、「今日も会社に来てくれてありがとう」と思っているというか(笑)。

塩野:おお、それはすごいですね!

須藤:だって、そう思いません? もし今、僕たちが若かった頃のやり方をそのまま当てはめたら、辞めちゃうでしょう。僕たちですら辞めようと思ったことが何回かあったんだし。それで怒らなくなったのかもしれない。どうしても僕たちの世代は、諸先輩方から怒られるということが、仕事の内容のコーチングというよりは、人格に響いていってしまうことが多くなかったですか?

塩野:なるほど。だんだん自分より年下のアーティストが増えてきて、自分が変わったなとか、年をとったなとか思ったりしますか?

須藤:僕はないですね。

塩野:じゃあ、ずっとロックでいられますね。ロックでいるの大変じゃないですか。氷室京介みたいに歳を取ろうと思ったら、見た目はさまぁ~ずになりがちですし。

須藤:いや僕、もともと別にロックな人間じゃないし(笑)。

僕たちって、レコード会社とはまた違って、メディアとしてやっているので、所属アーティストだけでなく、自分がこの人すごいな、キラキラしてるなと思ったら、つながるチャンスが無限にあるんですね。皆さんは人とのつながりに投資をするだろうけど、僕たちは仕事で自分がいいと思った人とか、世の中に今すごく受け入れられているアーティストとかとつながることができる。彼らと向き合っているとき、自分の年齢を気にしたことはまったくないですね。尊敬しっぱなしなので。さすがに芦田愛菜ちゃんとかのデビューに立ち会っていたら、年齢の差を意識したかもしれないけど(笑)。

「濃く深く」が求められなくなった

塩野:芦田愛菜と年齢差を感じなかったらやばいですね。これからの音楽番組ということで言うと、ユーザーが求める番組やミュージックビデオは、昔と比べて変わってきました?

須藤:変わりましたね。以前は対象について濃く深く掘り下げたものが受け入れられたけど、今はいろいろな情報をどれだけ冒頭に簡単に見られるかとか、どれだけそれぞれの感性の近くにあるかとかいうことも大事になってきている。そのうえで熱量がある、みたいな作り方に変わってきたと思いますね。僕たちはアメリカMTV世代だから、「アルバムをじっくり全曲紹介します」とか、「アルバムの中身をどこよりも深く伝えます」みたいな視聴率度外視な実験的な番組がうれしかったけど。

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