塩野:でも対アーティストだけでなく事務所やクライアントとの関係もあるから、失敗は許されないでしょう。それなのに若い人を信じて任せるのは、けっこうすごいリスクですよね。何か失礼なことをしでかしたらどうするんですか。そのときは自分で謝りに行く覚悟があるとか? どうやって部下に任せても大丈夫かを判断しているのですか?
須藤:それは本人の熱量ですよね。
塩野:熱量! かっこいい。
須藤:(編集者に)あの、塩野さんとはアメリカ時代からの長い付き合いだからわかりますけど、これ完全に僕をバカにしてますから(笑)。こういうふうに一段かん高い声で言うときは、「お前からそんな言葉が出るとは思わなかった」って意味ですから。
塩野:(意に介さず)熱量かあ。
ちゃんと熱いものを持っている
須藤:今の子たちって、どれほどの熱量があるのか見えにくいだけで、ちゃんと熱いものを持ってますよ。僕たちの世代はストレートに熱量を出せたけれど、今はやっぱり一見、愛国心だったり、飢餓感がなかったり、いろんな情報があふれているといわれていて、ただ僕たちには熱量が伝わりにくいかもしれない。だけどその人なりの熱量を見ていてあげると、実はすごくやる気のある顔つきになっていたり、一生懸命集中して作業をしていたりする。そういうところが見受けられると、もうそこで任せようと決めちゃいますね。
塩野:若い人のことを怒ったりしないですか?
須藤:怒ってましたよ、そうとう。でもそれは1年前までです。
塩野:1年前に変わったのですか?
須藤:はたから見たら何も変わってないと思いますけど(笑)、自分としては180度変わりました。
塩野:今はどういう怒り方を心掛けてますか?
須藤:うーん、そこを解説するのはめちゃくちゃ苦手かもしれない。ごめんなさい。僕もまだ正解がわからないですね。今、できているのは、小さなことも9割は褒めて1割怒ることくらいですかね。
塩野:最近、大人でもちゃんと怒る人が減ったでしょう? 怒るのって体力使うし、会社だとすぐハラスメントだなんだと言われるから、怒らずに黙って関係を絶ってしまう。ある意味で残酷ですよね。だから未熟な人もそこを改めるチャンスがなくて、知らないうちにどんどん信用を下げていってしまうし、それで大人になってしまう。でも須藤さんはちゃんと怒るんですよね。
須藤:いや、今はまさしく怒り方は模索しているところです。自分ではすごく変わったつもりだけど、人からは「変わってないよ」と言われるのがわかるから、言いづらいんですけど(笑)。怒るというよりは現場を全部任せて、その責任も取らせるようにしたということです。そのほうが結果的に組織の効率が上がるので。
塩野:任せるのは大事ですよね。いわゆる「出来る人」だと何でも先回りしてやってしまう人も多いけど、それでは自分がいつまでもプレーヤーのままで、大きな組織の上に立てない。下手すると「スーパーちびっ子」で終わってしまいますからね。
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