タリバンが「女性蔑視思想」を築いた3つの背景

イスラム法からタリバンの思想を読み解く

ワッハーブ派は、イスラム4大法学派の中でも、コーランとハディースを中心的な法源とする保守的で厳格なハンバル学派の流れを汲んでいる。アルカイダなど過激派の多くがハンバル学派に属すといわれる。

1996年〜2001年のタリバン政権下、鞭打ち刑や石打ち刑などコーランやハディースで言及されて量刑を変えられないイスラム刑法の身体刑であるハッド刑を適用したのも、コーランなどを字義通り解釈する傾向が強いワッハーブ派やハンバル学派の影響を受けたタリバンの思想を表すものであろう。

タリバンの過激思想は変わるのか

解釈次第で揺れ動くイスラム法は、イスラム圏でも論争を呼び、政治が安定しない要因の1つになっている。2010年末に起きた中東の民衆蜂起「アラブの春」では、エジプトやチュニジアなどで親欧米の独裁的な政権が打倒され、ムスリム同胞団をはじめとしたイスラム主義勢力が台頭。シャリーアを国家の法体系に適用したり、より重視したりすることを主張した。

これに対して世俗派の反発が強まり、政治的な混乱の余波は今も続いている。シャリーアを重視して国家の法体系に多くの要素を取り入れているのは、サウジやイラン、インドネシアなどで、鞭打ち刑などが今も執行され、国内外で物議を醸している。

シャリーアは、解釈次第でムハンマドが生きていた6〜7世紀の時代に逆戻りさせることもできるし、柔軟に解釈することで、女性の人権など現代的な価値観と共存することも可能だ。2001年にタリバン前政権が崩壊して以降、都市部を中心にアフガニスタン国民は、男女平等などの欧米がもたらした価値観に触れてきた。タリバンもアメリカと和平交渉に臨むなど限定的ながらも国際社会と接触してきた。

タリバンの主導するアフガニスタンが今後、国際社会から孤立しないためには、女性の人権など普遍的な価値観を受容することが求められている。だが、武力や暴力を用いるタリバンのイスラム思想が、市民社会やイスラム法学者の広範な議論を通じて変化することは期待できず、タリバン自身が変えるしかない。

原理主義的な宗教思想を簡単には変えないことが原理主義者と呼ばれる所以である。タリバンの極端なイスラム法の解釈が野に下った20年の間に変化したのかどうか、厳しい視線が注がれている。 

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