「会社が息苦しい」人が目指すべき新しい共同体 抑圧から信頼へと日本社会がシフトしつつある

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しかし、本当の信頼というものは、そういった奴隷のような関係性で作るものではなく、共同体の外側にいる、知らない人のことを信頼できるかどうかという一般型の信頼であるはずです。

たとえば、アメリカのヒッチハイクなどは、知らない人を車に乗せられるかどうかですから、一般型の信頼がなければできませんよね。いまの日本の若者にはそういう信頼感があるようです。

佐々木 俊尚(ささき としなお)/ジャーナリスト。1961年兵庫県生まれ。早稲田大学政治経済学部中退。毎日新聞記者、『月刊アスキー』編集部を経て、2003年よりフリージャーナリストとして活躍。ITから政治、経済、社会まで、幅広い分野で発言を続ける。最近は、東京、軽井沢、福井の3拠点で、ミニマリストとしての暮らしを実践。『レイヤー化する世界』(NHK出版新書)、『そして、暮らしは共同体になる。』(アノニマ・スタジオ)、『時間とテクノロジー』(光文社)など著書多数(写真:筆者提供)

これは、ヤクザの集団であった日本の農村型共同体が喪失したことに影響していると考えられます。戦後は村がなくなり、企業文化となりました。

そして、日本の会社は、失われた村社会を埋めるものでもあったわけです。ところが、2000年代になって派遣法が改正され、非正規雇用が増えて、終身雇用も崩壊しました。もはや、会社は共同体ではなくなったのです。

共同体のない世界で生きている若者だからこそ、一般型の信頼を他人に与えるようになったと同時に、新しい共同体に対する期待も高まっている。そう考えられるでしょう。

シェアハウスなどのカルチャーもそうですね。知らない人と一緒に暮らして、キッチンも共有して、子育ても共有するなど疑似家族を作る。新しい共同体を作りたいという気持ちが出てきているのではないでしょうか。

『モンク思考』には、著者のジェイ・シェティさんが過ごしたインドのアシュラムの話が書かれています。僧侶が共同生活をしながら修行に励むという共同体ですが、これもシェアハウスのひとつと言えるでしょう。

ひとえに共同体と言っても、何を共有するかなんですよね。農村型共同体は、同調圧力が強かった。中にいれば安心だが、抑圧も強い。日本の企業社会も、終身雇用で守られているけれども、そこから外れられないという抑圧が強かった。

そうすると、本書に書かれているモンク・マインドや、日常生活を大事にする、みんなで食事を作って掃除をするというような、習慣にもとづく信頼感のある共同体なら、「いいな」と感じる人が多いのではないでしょうか。

両極端に走りがちな部族主義

今の社会には、過激な人と過激な人がぶつかるという両極端が目立ちます。これはまた、過激な志向の共同体に人々が飲み込まれていった部分があるのではないかと僕は見ています。

孤独な群衆が出現すると、ポピュリズムに走りやすくなる。それが、愛国主義などの右だけでなく、左にも起きているのが現在の現象です。

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