「会社が息苦しい」人が目指すべき新しい共同体 抑圧から信頼へと日本社会がシフトしつつある

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本書でとても興味深く読んだのは、「兵士のマインドセット」と「斥候のマインドセット」についてです。

兵士のマインドセットは、防衛本能や部族主義に根差していて、その世界の中だけで生きて、外側の世界は見ずに自分の正しさにこだわるというものですが、これはまさに、SNSで起きている「エコーチェンバー」や、「党派性」と言われる現象と同じです。本人たちはその狭い世界で生きていければよいのかもしれませんが、それが幸せなのかというと疑問です。

一方、斥候のマインドセットは、部族や共同体の内側にいるよりも、もっと世の中の真実を知りたいと興味を持つものです。今まで知らなかったことや、自分が知っていたけれども、その考えに反する話が出てきた時に、それを面白いと思えるかどうかが重要だとされています。

これは、まさにいまの時代に重要な思想だと思います。どんどん部族主義に走って、自分の見たくないものは一切見ないという方向に走っている人が増えていますが、本来、知性的であるということは、斥候のマインドセットを持っているということでしょう。

「反知性主義」と言われますが、それを誤解した日本人が、よく「世の中はバカばっかりだ!」というふうに使っているのを見かけます。しかし、本当の知性主義というのは、知性がないことをバカにするようなものではありません。自分の知らないことをどんどん探して、自分が学ぼうとする、その姿勢こそを言うわけです。

ところが、ただ相手を罵って、「どっちがバカなのか」でマウントを取るという方向に走っていますよね。そういった人々のあり方を知るという意味でも、本書は含蓄の深い一冊だと思います。

承認欲求の抑圧から、内面に向かう時代へ

SNSについてさらに考えていくと、ものすごく承認欲求が満たされやすくなったことで、逆に言えば、「いかに承認欲求を満たすのか」ということそのものが抑圧になってきたとも言えます。

一時期「インスタ映え」という言葉が流行りました。自分をいかに美しく撮るかにこだわったり、レストランで食事を注文しても、食べずに必死に撮影するという光景もありましたよね。

ところが、現在インスタグラマーたちは、もはや盛り過ぎた「インスタ映え」は古いと思うようになっており、内面の暗さを全面的に出して、本心をさらけ出すほうがカッコいいとされています。つまり、承認欲求を満たす行為をやりすぎた結果の、裏返しが起きているのです。

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