「会社が息苦しい」人が目指すべき新しい共同体 抑圧から信頼へと日本社会がシフトしつつある
そしてこの現象は、アメリカの歌手ビリー・アイリッシュのムーブメントとも重なっています。時代はどんどん内側に向かう方向に来ていて、SNSでも、自撮りはするけれども、顔にマスクをかけたり加工したりして、顔を出さない人が増えています。
自分の外見的な美しさをガンガン出すのではなく、内面を見てほしいというわけです。
しかし、ここで面白いのは、心の美しさは、いくら盛っても盛れないということです。たとえば、心を盛ろうとして、毎日コンビニで店員さんに「ありがとう」と言うことをくり返したとします。そうすると、自然と本当にいい人になりますよ。
内面の美しさを見せていくということは、その人全体が変わるということでもあるわけです。『モンク思考』にも、人に奉仕をしなさいと書かれています。それは、内面が変わるからです。
内省や自省するということへの期待
東日本大震災以降、僕は、宗教が復興されるのではと思ってきましたが、本書では、僧侶の思想に立ち返る形で、宗教の価値や意味というものを問うているところが新しいと感じました。
アメリカでベストセラーになっているのは、やはり、内省や自省するということへの期待感があるからではないでしょうか。
世界的に宗教離れが起きてもいます。フランスは、若者の間でカトリック離れが起きていますし、アメリカでも無宗教になる人が増えています。
そもそも教会は、無秩序な戦争が起きていた時代、社会的ヒエラルキーという、ある種の秩序を人々に与えることで、安定感をもたらす機能があったと言われています。中世ヨーロッパでは、戦争の混乱のさなか、食べる物もありませんでした。しかし「聖」と「俗」という秩序に自分をはめ込めば、乱世においても安定していられるという感覚があったのです。
ところが、現代は逆に、秩序から逃れたい人のほうが多い状態です。カトリックのヒエラルキーは、もはや現代人には向いていないということになります。
日本における仏教も同じでしょう。日本人は、仏教などの宗教が、自分たちにとって一体何なのかということがわからなくなっています。寺は檀家に支えられ、葬式仏教になっていますが、年々その檀家が消滅して、末端の寺は成り立たなくなっています。
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