で、どうも私はそのことに成功したのかもしれない、と言いたいのであります。そう私は今、間違いなく夏が好きだ。心待ちにしていると言っても構わない。夏の間じゅう、夏とキャッキャと戯れて過ごしている。例えて言えば、毎日を南のリゾート地で過ごしているような感じである。
……はい、ウーソーダーという声が聞こえてきます。んなことあるわけないと。だって、エアコンをフルに使っていたって夏は暑くて不快という人が大半という今日この頃。それが、エアコンなし? そんなの想像もつかないほどひどい生活に違いないと考えるのが普通ですよねやっぱり。それがエアコンを使わず、しかも快適って……そんなことあるわけない。
でもね、実際あるんだなこれが!
ということで、まずは私がこの奇跡に足を踏み入れたきっかけから書こうと思う。
暑さの中にも涼しさが隠れている
始まりは10年前。福島の原発事故で節電を意識せざるをえなくなり、ふと、そうだ家の冷房をつけずにひと夏を乗り切ってみようと思いついたことであった。
当時は会社員だったので、平日は楽勝だった。何しろ長時間勤務だったのでこれ幸いと、夜遅くまで冷房のガンガンに効いた会社で過ごせばよかった。問題は休日だ。当然、暑い。おとなしく読書などしていても、暑さは容赦なく全身にまとわりついてくる。ソファにごろりと横になっても暑すぎてウトウトすることもできない。つまりは何をどうやってもイライラと身の置き所がない。
仕方なく外出する。
だが外も暑い。何しろ考えてみれば、気温は窓を全開にした家の中と変わらないのだ。いやむしろ外には「ひなた」もあるわけで、直射日光に照りつけられるとフライパンで焼かれるようだ。いやはやこの過酷な夏を前にしてはどこにも逃げ場というものはないのだなと……と深くため息をつく。
でもそんな絶望は、案外一瞬にして過ぎ去ったのであった。
じりじり直射日光に照りつけられた後、街路樹の下の日陰に差し掛かるとホッとしている自分がいる。だってちょっとだけ涼しいのだ。さらに、わずかに風が顔に当たったりすると、また涼しい。そしてうれしい。
いやー風ってすごいね……っていうかよく自分を観察してみれば、歩いているだけで顔にわずかな風を感じるではないか。そっか、自分が動いてるから風がなくても空気が当たるんだ! などと細かすぎることに気づいて喜ぶ。
そんなこんなで、次第に面白くなってきた。
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