ファイザー製新型コロナウイルスワクチン(コミナティ筋注、以下、ファイザーワクチン)は、日本を含め、世界中で広く用いられています。このワクチンが日本に導入された当初、医療従事者向け先行接種事業で安全性情報が収集されました。
私は、ワクチンの安全性を考えるうえで、特に副反応として挙げられているアレルギー反応の一種、アナフィラキシーに着目し、その情報をまとめた厚生労働省公開データを共同研究者とともに2次的に解析しました。
その結果が、2021年6月14日にイギリス・オックスフォード大学出版局が発行する国際的な医学誌『Journal of Travel Medicine(旅行医学ジャーナル、JTM)』誌に短報として公開されました。
アナフィラキシーとは、アレルギー物質(アレルゲン)が体内に入った後、数分後から十数分以内に起こる過敏反応のことで、皮膚や粘膜、呼吸器や循環器など、複数の場所に同時に症状が表れるのが特徴です。このうち、急な血圧低下や意識障害が起こるものを、アナフィラキシー・ショックと呼びます。
日本アレルギー学会「アナフィラキシーガイドライン」によると、具体的な症状は発疹(じんましん)や赤み、かゆみ、唇やまぶたの浮腫、腹痛、嘔吐、喘鳴(ぜんめい・呼吸がゼーゼーする)、呼吸困難、血圧低下、意識障害など、実にさまざまです。
約18万人の医療従事者の接種状況から
国立病院機構など100の医療機関を対象に、医療従事者向けファイザーワクチンの先行接種が2021年2月17日から始められました。これは、日本人での安全性情報が当時は不十分だったため、まず新型コロナウイルスへの感染リスクの高い医療従事者で接種を行い、安全性のデータを集めようという政策的意図があったと考えられます。
3月11日時点で約18万人の医療従事者が1回以上の接種を終え、その副反応発現状況が3月12日の「第53回厚生科学審議会」の資料として公開されました。
しかし、生データとして公開されているだけでは、その医学的解釈は難しく、また、医学界で重要視されている第三者からの査読を受けた論文の形にまではなっていないため、その評価も困難です。そこで、この資料の中のデータを2次解析し、医学論文としてまとめたのです。
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