別の業界に、似たコメントをしている若手のトップリーダーがいる。将棋の藤井聡太二冠だ。
強くなるための課題について聞かれて
「たくさんあると思いますけど、まずは序中盤の形勢判断でしょうか。将棋にはものすごく強くなる余地があると思っていますので、自分の頑張り次第か、と思います」
人の将棋の可能性、AI将棋との力関係について
「今ではソフトとの対決の時代を超えて共存という時代に入ったのかなと思います」
藤井も断定口調を避けて「か」「かな」と語尾をぼかすことが結構ある。大谷も藤井も、若くしてその世界のトップに立った。メディアは殺到するし、人々はその一挙手一投足に注目する。そんな中で、野球や将棋に集中するためには「如才ない」処世術を身に付ける必要があったのではないか。
大谷のプレーが明るい印象を与えるワケ
当たり前のことだと思われるかもしれないが、そうではないのだ。NPBのトップ選手の中からは、こんな発言が聞こえる。
「僕にとって野球は『仕事』です。楽しいと思ったことはないですね」
「オフになれば、ゴルフをしたり、友人と飲みに行ったりします。野球をしばらくは忘れたいので」
とくに甲子園で活躍したような選手は、高校時代から厳しい指導者に鍛えられ、軍隊のような生活を続けてきた。それだけに「野球を楽しむ」心境になれないのだろう。
しかし大谷は、自ら公言しているように「野球が好き」で、オフも「野球がもっとうまくなるために」努力している。試合でも塁間を駆け抜けるときなど「楽しくて仕方がない」という表情を見せ、野球を心底楽しんでいることが見て取れる。
この点も「将棋が好きでたまらない」藤井と通じるが、「野球が好き」という揺るがない気持ちが、大谷のプレーを闊達で明るいものにしている。そして観るものに爽快感を与えている。
大谷も27歳になった。世界中から才能ある若者がやってくるMLBにおいて、彼はもう若手ではなく中堅だ。ライバルのゲレーロJr.(ブルージェイズ)やタティスJr.(パドレス)は5歳も若い22歳だ。順風満帆がどこまで続くかはわからない。しかし、彼は「好きな野球」を追い求めるために、純粋な努力を重ねるだろう。だから応援する気にもなるのだ。
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